前回の続きです
もう1つは「逆境にも負けない」もの。
例えば雪印の結晶のマークが、惜しまれつつさようならしてしまったように、企業立て直しの象徴として会社のロゴマーク、シンボルマークが変わってしまうことがある。デザインとの別れは致し方ないものの、できればこんなお別れは避けたいものである。
雪印のように去って行ってしまうのかしら、と心配だったのが
国際自動車のマーク。kmタクシーのマークと言ったほうが分かりやすいかもしれない、四角の中にアルファベットのみのシンプル、かつ堂々としたマークだ。
「国土交通省関東運輸局の許可取り消しにより、9月12日付で最低2年間は営業運行ができない」というニュースを聞き、国際自動車に問い合わせたところ、処分を受けるのは本社のみであり、マークを使用しているグループとしては変わらない、というお答えをいただいて一安心。
タクシーはどうせ乗るならkmのマークがいいな−、と思っている。なぜならかっこいいから。
黒塗り車両(だけじゃないが)に、渋いマーク。kmのタクシーに乗ると自分が1ランク上がったような気分になるのだ。
そんなランク上感を象徴するマークはさる大物デザイナーがデザインしたと聞いていたので、この機会に確かめてみたところ、確かにそのデザイナーの作だった。
「大智浩氏の作品です」
1961年、観光バスのデザインリニューアルに使われたマークが、当時の社長波多野元二社長の目に留まり、1964年社章に制定。以後タクシーにも使われるシンボルマークとなった。
大智氏のデザインのほとんどは現行使用されていないので、若い読者は馴染みがないのかもしれないが、過去キングジム、キリンオレンジ、出光興産、公明党など多くのマークや、デザイン誌『アイデア』の創刊号(1953年)から21年間アートディレクションなどを手がけた。日本人初のAGI(国際グラフィック連盟)メンバーで、1974年に亡くなるまで、戦後の日本グラフィック界を牽引した1人である。
私の知る限り、大智氏のデザインで現在使われているのはこのkmマークと、田中食品の「旅行の友」、台湾の食品メーカー
味全のマークのみ。できればどれも長く使われて欲しい。