アイスクリーム(厳密に言うと脂肪分や成分により、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓などに分かれるが、記事内では総括してアイスクリーム)を巡る背景はといえば多様化の一途を辿る。カップや棒付きだけじゃない、とばかりに1963年にグリコジャイアントコーンの前身グリココーン、1976年森永エスキモーピノ、1977年頃にグリコパピコなどが出たのもこの頃。他にも様々なアイスクリームが出ては消え、出ては消えしていった。
その後、現在のホームラン坊やに落ち着くまで、なんと10種のキャラクターが登場。一時はキャラクター自体なくなったこともある。
この紆余曲折も致し方ないことで、80年代に入って以後、アイスクリーム市場はさらに変化を続けている。
夏だけのものではなくなり(ロッテ雪見だいふくが出たのは1981年)、バブルと共に高級志向が高まり(ハーゲンダッツの日本上陸は1984年)、駄菓子屋や個人商店が減った代わりに、チェーン店のコンビニや大型店が増えた。
また、ここ数年はアイスクリームを一個買うのではなく、マルチパックの箱入りのほうが売れているという。90年代以降ではサッカーに押され、野球人気が減ったこともあった。
ホームランバーはその時代時代に合わせて来たからこそ現在も続いている、とも言えるが、振り回されてしまい定番とはほど遠くなってしまった、とも言える。
そんな状況を打開しようと、きちんとしたアイデンティティのホームラン坊やを作ったのが2005年。堀田聡氏のアートディレクションで、土器修三氏のイラストを起用した。
11代目のホームラン坊やはメインターゲットの子供達に安心感を与える「丸顔、丸目、丸鼻」が特徴。顔だけでなく身体もつき、動きをもったキャラクターだ。
面白いのは、11代を経て初代和田誠氏のホームラン坊やに似た姿になって帰って来た、ということ。一本売りはほとんどなく箱で販売されるため、実際に食べるターゲットは子供でも、購買層は大人となる。大人にかつてのホームランバーの記憶を呼び起こしてもらい、子供にも受けるかわいらしさをもったキャラなのだ。
このキャラクターはじわじわと浸透し、5年掛けてアイデンティティをしっかりと確立。今年の50周年に合わせて、CMや専用サイト、またヨーグルトやプリンにも派生し、様々に活躍するキャラクターとなった。
アイスクリームに限らず食品全般、生存競争はますます厳しくなっている。
往年の遺産を掘り起こし、単なるレトロではなく再生させるホームラン坊やの方法は、他の分野でも学ぶことが多いのではないだろうか。