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『proto-』と『デザインの骨格』
ライター渡部です。

 昨年末に『proto-』という本が出て、ブログに書こう書こうと随分引き延ばしてしまったら、今度は1月末に『proto-』にも参加している山中俊治氏の本『デザインの骨格』が出て、どうせなら2冊一緒に読んだ感想を書こう、という乱暴な業をしてみることにした。
 山中氏が共通項でもあるけれど、「proto=根源の、主要な」と「骨格」という言葉もなんとなく近い。
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『proto-』株式会社竹尾 編、 山口信博、緒方慎一郎、山中俊治 企画・構成 毎日新聞社刊
http://books.mainichi.co.jp/2010/12/proto--9a25.html
http://www.takeo.co.jp/site/mdse/linkage/book_paper.html

『proto-』は「TAKEO PAPER SHOW 2010 proto- 感じるペーパーショウ」 http://www.takeopapershow.com/ のドキュメンタリー。 展覧会では、ディレクションを務めた3人、山口氏が折るという行為を、緒方氏が原紙のボリュームを、山中氏が紙を抄き水に戻す事を繰り返す機械を、とそれぞれ異なる方法で紙の原点を探っている。
 書籍ではこの展覧会のプロセスを丹念に追い、小泉佳春氏、雨宮秀也氏による展示風景や準備段階の写真、展示の企画、山口氏、緒方氏、山中氏へのインタビュー、そして大谷道子氏による紙についてのエセー他からなる。紙の歴史や定義、使われ方、あまりにも幅広く膨張してしまいそうな内容をきゅっとまとめた大谷氏の文章は見事。展示のコンセプトである「proto-」をつかまえた気分になる。
 本一冊、帯、カバー、本文用紙など使われている紙は10種。かなりテクスチャーのあるどっしりとした紙が揃っている。紙の原点に向かう文章を読み、がさごそと紙を触り、紙の物質感を実感できるものとなっている。

 実は私自身、昨年のペーパーショウを見逃してしまっていて、この本が出るのを心待ちにしており、行ってない分を取り返そう、と思っていたのだ、が、それは浅はかであった。
 インタビュー中、緒方氏の言葉を引用すると、
「感動するのは、やっぱりリアリティがあるからなんですよ。またはリアリティがあるものにリアリティがないという場合。たとえば、ティッシュペーパーという普段よく知っているものの〝原反〟という未知のものを見る。いちばん知っている人が実は知らない人だったという、そこに感動が生まれるんじゃないでしょうか」
 やはり紙は「物」。こと、今回は「デザイン=手技を見せるという方向になら(山口氏のインタビュー内、大谷氏の言葉)」ず、触感、空気、自分の身体感覚を紙にぶつけるものだっただけに、リアリティーと対面し、感動を逃してしまったことは逆に悔やまれる。


『デザインの骨格』山中俊治 著 日経BP社刊
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/191120.html

 こちらは山中氏の同名ブログ http://lleedd.com/blog/ が始まった2009年4月1日から2010年末までを、書籍用に再編集したもの。ブログというのはその日その時の状況、気持ちを素直に出しやすい媒体なので、(山中氏が大変な策士でない限り)書籍や雑誌などで編集された言葉やインタビューよりもより山中氏の肉声に近い気がする。
 山中氏の仕事はとてもハイテクで、難しいことなのだけれど、本人の言葉がとても穏やかで、難しさのバリアを取り除いていくれる。
 この中でも「TAKEO PAPER SHOW 2010 proto- 感じるペーパーショウ」について触れているのだが、なんだか中学生の作文のような素直さなのだ。準備段階で製紙工場に行った時は「どれもこれも目新しい事ばかりでとても楽しい見学でした」。紙が出来くる様子を見て「ちょっと感動しました」。
 こう言われると読んでいる方も「へー、そーなんだー」と、こっちも素直に反応してしまう。

 『proto-』と『デザインの骨格』は、スタイルの異なる本だけれど、続けて読んでみて思ったのは、(デザインの)本質や基幹となるコンセプトはそうそう簡単に捕まえられるものではなくて、ひどくまわりくどいことをしながら、日々の暮らしで蓄積していきながら、そこでやっと見つけられるもの、ということ。で、あると同時に、そうやって色んなことを吸収したデザイナーの身体感覚でふっと「いいなあ」と感じるもの。なのではないか、ということだった。
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by dezagen | 2011-02-09 04:19 |