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ソウル IP Boutique Hotel
先日ソウルに行った際、こんなホテルに泊まってみた。
IP Boutique Hotel
http://www.ipboutiquehotel.com/

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かなり装飾に凝ったホテルである。

私はこの手のホテルをどう呼ぶか決めかねているのだけれど、「デザインホテル」とか「ブティックホテル」とか、エクステリア/インテリアデザインに力を入れセールスポイントにしているホテル、というのはここ10年くらい世界的な傾向として増えている。
今回、初ソウルでエリアの特徴もよく分からなかったこともあって、どこでもいいからデザインに特徴のあるホテルにしてみようかなと思って探してみたのだが、意外なことにほとんどない。
実際、この点では東京に似ていて、贅を尽くした高級ホテルを除き、その手の…、なんかいい言い方がないので「おしゃれホテル」としておく、は少なく、中級ホテルは機能重視でビジネスホテルのステレオタイプに依っているところが圧倒的に多い。
その中でIP ブティックホテルは唯一の中級「おしゃれホテル」だった。

工業デザインの世界ではデザイン大国と言われる韓国の首都なのに、なぜここだけ?
気になって泊まることにしたのである。

IP ブティックホテルがオープンしたのは、昨年2010年の3月2日。主に団体旅行客向けだった「梨泰院(イテウォン) ホテル」を、インペリアル パレスグループが買い上げ、大幅にリニューアル。周囲は大使館の多いエリアであることを反映し、海外から来る個人のビジネス客に主なターゲットを絞った。
オープンから1年、狙いは見事に当たり、個人の旅行者だけで平均回転率98%だという。98%は大げさなのでは?と思ったものの、部屋数は132とそれほど多くなく、ロビーのチェックインチェックアウト具合を見た限りあながち嘘でもなさそうだった。徒歩圏内にある大使館はタイ、ラオス、カンボジア、パキスタン、ガボン、アンゴラ、ベルギー、アイスランド、セルビアモンテネグロで、確かにその辺だなあという人々がtumiとかビジネスマンっぽいスーツケースを持って行き来していた。日本人の利用は少なく全体の8%だそうである。

と、ちょっと待て。私は「数多あるソウルの中級ホテルでなぜここだけおしゃれホテルなの?」を聞きにきたのである。
客室マネージャーのキム・テヨンさんに聞いてみると「私達はデザインに焦点を置いているわけではありません。一番重要なのはホスピタリティです。装飾的だと思われるかもしれませんが、付加的なものです」とあっけない返事。
続けて「インペリアルパレスホテルのグループはこれまで、ソウルと福岡にヨーロッパ風のインペリアルパレスホテル、セブ島にリゾートとアミューズメント要素のあるインペリアルパレス・ウォーターパーク・リゾート&スパを作り、今回はこれまでとは違った新しい形のビジネスホテルを作ろうと思っていました。ソウルのインペリアルパレスよりもカジュアルで、ビジネス対応を重視したホテルです。表から見えるレストランはかなりインテリアを重視していますが、ホテルのお客様だけでなく一般の方も使うレストランですから」と言う。

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しかし、部屋にはどーんと壁画が描いてあるし(私の部屋はキスマークだった)、

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廊下が足下がおぼつかないほど暗いし(というのは部屋の白さを引き立てる演出だそうだ)、それでもデザインを意識したとは頑なに言ってくれなかったのだが話を続けていくうち、
「あまり過剰にデザインに力を入れたホテルはモーテル(ラブホテル)だと思われてしまいます」と言われてやっと納得した。

帰国後、私なりに考えてみた(かなり横暴な)解釈はこうである。
「世界的に見ておしゃれってこんな感じなのかも」。

IP ブティックホテルは海外客をターゲットとしたビジネスホテルである。
梨泰院という場所を選んだとして、駅のすぐそばには中級ホテルのハミルトンがある。高級ホテルがよければグランドハイアットがある。駅から多少歩いてもここに泊まりたいと思わせる個性的な付加価値を付けなければいけない。
個性的な付加価値として視覚的に見える装飾性は分かりやすい。
レストラン及び同じフロアのロビーは地元の人も利用する飲食店の基準で装飾性を付加しても構わないので、どんどん作り込む。
では客室はどうするか。
ここに遊びを取り入れすぎればラブホテルだと思われかねない。
本家のインペリアルパレスと同じヨーロッパ路線で作ったとしたら、よほど作り込めば別だが、海外の人から見れば「韓国でヨーロッパ風?真似がうまいね」になってしまう。
シンプルモダンな路線では「何もない」と解釈する人もいる。
恐らく、ここが肝。

シンプルなデザインにおしゃれさを見いだすのは、世界的に見て実際ごく一部でしかない。
海外旅行に行くたび、変な柄や妙なヒネリのない普通の食器、イラストのついてないノート、柄もロゴマークも付いてない白いTシャツ、こうしたものを探すのにどれだけ苦労してきたことか。
白物家電ですら未だに柄付きのものが変わらぬ人気を誇っている国も多い。
シンプル=なんにも着いていないもの=貧乏臭い、と思う人々が世界の大半なのだ、と、思う。

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(こういうシンプルさに「何もない」と思う人もいるわけです)

IPブティックホテルの室内は、壁画(とあと1,2個のこと)さえなければ、極めてシンプルで使いやすく、すっきりしたデザインである。壁画の役割は無地のジャケットに着けるブローチやコサージュのようなもの。「無地だからってオシャレに気を使ってないわけじゃないのよ」のステートメントというわけだ。
ホテルのデザインは壁画も含め、インペリアルホテル会長、シン・チョルホ氏のディレクションの下、社内のデザイナー2名が担当して作っているという。

正直なところ、行く前はもっとトンデモなホテルを想像していて、どこが扉かわからないクローゼットとか、場所ばっかり取って座りにくい椅子とか、バスタブや水栓の形を凝っちゃったばっかりに水が四方八方へ飛んでいくとか、飲みにくいコーヒーカップとか(すべて「デザインに凝りました」と言われたホテルで経験済み)ないのかなーと思ったが、なかった。
スタッフは何事も対応が早いし、ウォッシュレットだし(ハングルなんでなんだかよく分からなかったけど)、
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wifiタダだし、iPodステーションもあるし、コムデギャルソンのビルやサムソン美術館も徒歩圏だ。

雑感をだーっと書いてきたけれど、一番気になるのは「デザインが過剰だとラブホテルに見えてしまう」という点。どんなデザインになると、ラブホテルだと思われてしまうのか、あるいはその区切りを考える自体おかしいのだろうか。

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ロビーにあったブランドで遊ぶ親子。ラブホテルだとは思ってないよね。
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by dezagen | 2011-03-13 08:06 | インテリア