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バレンタインチョコレート考
ライター、渡部のほうです。

なぜ、バレンタインシーズンになるとチョコレートのパッケージはカッコ悪くなるのだろう?
カッコ悪い、と言っても私の趣味じゃない、というだけの話だが。

一例として、高級チョコレートの代表格のような存在、ゴディバ。
http://www.godiva.co.jp/layout/gdv/valentine/grain.html 
ハイメ・アヨン(ゴディバの表記はアジョン。スペイン語のカタカナ表記は難しいのです)が担当したと描いてある。
普段は金色のパッケージだが、2012年のバレンタインコレクションのパッケージはピンクをベースにしたかわいい女の子のイラストレーションのものと、ラインストーンをあしらったハート型の容器。
パッケージじゃないが、時期限定のホワイトチョコレートに赤いハートのついた「モンダムール ハートムース」は、ぱっと見キティちゃんに見えなくもない。
うーむ、これって明らかに女子仕様…。

(余談:ゴディバは1966年から2007年までキャンベル傘下、現在はトルコのYıldız Holdingが所有している。この会社の母体となったÜlkerはトルコの森永みたいな会社で、ロンドン滞在中はビスケットやチョコレート菓子をたまに食べた記憶。)

バレンタインデーになるとパッケージが女子仕様になるのはゴディバだけではない。カッコ悪いというよりは、あまりに女子供(これって差別用語かしら?)すぎて、ファンシー傾向になってしまうのが気になる。

バレンタインデーにチョコレートを送る習慣は、基本的に女性から男性というルールは固守しているようである。
難しいのは購入者が女性であるものの、最終消費者は男性である、ということ。これは商品のパッケージを作るデザイナー、メーカーからすれば、なかなか難しい条件ではある。
最終消費者のテーストは購入者の判断に任せざるを得ず、まずは購入者である女性、特にコアターゲットである20代女性、にアピールするようなパッケージになっている、というのが実情なのだろう。

とはいえ、果たしてこうしたかわいらしいパッケージは男性に受けるのか?
実際に売り場に甥(20歳)と行ってみたり、ウェブの写真などを周囲の男性に見せて、どう思うか聞いてみた。私としては「こんなのは欲しくない」と言って欲しかったのだが、答えは意外な方向を向いていた。

「贈った女子がこういうのが好きなんだなって、かわいい子なんだなと思う」

なるほど。
男性は意外に寛容なのだった。

が、よくよく聞いていると
「パッケージはあんまり気にしない」
だそうだ。
パッケージがファンシーであれどうあれ有名ブランドである「ゴディバ」と書いてあれば、そのブランド名で十分。知らないブランドは知らないブランドで、基本パッケージはすぐ捨てるものだから気にしない、という意見が多い。

そもそも、チョコレートへの関心度はそうそう大きくないようだ。「好きなチョコレートは?」と聞いて、ブランド名、商品名を上げる人はほぼ皆無だった。
これが例えば「好きなポテトチップスは?」と聞けば「コイケヤののり塩」とか「わさビーフ」とか、アイスクリームだったら「ピノ」とか「ハーゲンダッツのバニラ」とか、ラーメンだったらどこそこの塩味が好きだとか、比較的よく食べるものはブランド名、商品名が出て来るが、チョコレート単品、特に高級チョコレートとなるとよく分からない領域らしい。

かといってチョコレートが嫌い、全く関心がない、というわけでもなく、「好きなチョコレートは?」の回答は「ナッツの入ってるもの」「ウエハースではさんであるもの」「オレンジのがコーティングされてるものが来たら高級だと分かる」「トリュフ」「ビター」「ミルク味の濃いもの」などなど、割と答えてくれる。

100人、1000人単位でアンケートを取ったわけではなく、周囲の二十人前後に聞いただけなので、本当にざっくりとした印象でしかないけれど、概ね味よりもテクスチャーを説明してくれる人が多かった。チョコレートそのものよりクッキーやナッツと一緒になった「チョコレート菓子」は人気が高い(チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート、の呼び方の違いについては「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」でお調べ下さい)。
チョコレートそのものを食べる機会は「仕事でものすごく疲れてる時」「キオスクで買う」と、あまり機会がないようだ。

考えてみたら、フランス始め海外のショコラティエが東京に出店しはじめ、高級チョコレート(ショコラと言ったほうがよろしいですか?)が話題に上るようになったのはここ10年くらいのお話。ギフトとしてのチョコレート文化はまだ萌芽期といったところだろうか。

とと、パッケージの話から逸れてしまった。
ゴディバのパッケージの女子仕様を見て感じたのは、女性から男性への愛情表現としてのバレンタインデーの崩壊である。それが贈り物という形を取ろうとも購入者である女性が、「これを手に入れた」という特権感を得て自らを喜ばせるためにあり、贈る相手のためではないのではないか、ということ。
「そんなの当たり前じゃん」という女子の声が聞こえそうだが、ではメーカー及びデザイナーはどうものを作ればいいのだろう。

女子のための女子の祭典と割り切ってしまえば、女子向けターゲットの商品を作ればいい。なのだが、一応贈る相手がいることで、なんだか歯切れが悪い。
バレンタインデーは女性が男性に向けてチョコレートを贈る、という習慣は日本で独自に育ったものだが、70年代に一般化しすでに40年近い歴史があることになる。これを「じゃ、やめましょう」というのは無理がある。
そもそも欧米から来た習慣なのだから、欧米式に迎合して、男性も女性も愛情表現としてギフトを贈る日、と軌道修正したほうがまだなんとなくモノも作りやすいような気がする。こういうのはキャンペーン次第で動くこともあるので、広告系のデザイナーは腕の見せ所かもしれない。

単純に自分の趣味に合わない習慣がますます自分の趣味に合わなくなってるなー、というところから端を発した話なんだけど。

ちなみに伊勢丹デパ地下で、リサーチと称して甥とこれだけ買いました(夜に撮ったので暗くてアレですが)。

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帰って見てびっくり、チョコレートはデメルだけで、他は全部マカロン。私も甥もチョコレート単品にはあんまりそそられなかったというお話。
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by dezagen | 2012-01-26 00:39 | プロダクト・パッケージ