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チョコレート考25
ライター渡部のほうです。

もうこれでチョコレート考は一旦おしまい。
最後のとりを飾るのは、Mast Brothers Chocolate http://mastbrothers.com

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日本に入ってるとは知らなかったので、今回は取りあげないことにしようと思っていたのに、アンリ・ルルーを買いにミッドタウンに行った際に寄ったディーン&デルーカに入っていた。
最初から決めていたらさくっと買ったかもしれないが、板チョコ1枚1365円。
値段にビビって、3回ディーン&デルーカを出たり入ったりしてたのは私です。

Mast Brothers Chocolateはそれまで全く別の仕事をしていた兄弟が、チョコレート作りに魅せられて自宅キッチンで作り始めたことから始まり、現在工房とショップを構え少量生産で一つ一つ作っている、という話は色んなニュースで聞いた。

欧米のチョコレート関係のニュースを読んでいると(もうこの2週間くらい相当読んだ)、最近「Bean to bar chocolate makers」という言葉がよく出て来る。
製菓用に加工された素材ではなく、カカオ豆そのものからチョコレート製品まで作る生産者のこと。
他者に任せた素材がない分、カカオ豆の生産地、生産状況、その質をよく吟味して使う、というメリットがある。
大きな会社なら大量に仕入れることも可能だが、これを少量生産で作ろうとするとなかなか困難である。そもそもチョコレートの製造方法は非常に手が掛かる。Mast Brothers Chocolateはそういった壁を乗り越え、個人のチョコレート屋さんを開いた。

また、チョコレートの原点に還るというのも彼らの意図。現在市販されているチョコレート、裏側の素材を見ると、乳化剤、植物性油脂(ちなみにこれをチョコレート材料として認めるか否かでEU内でもめたことがあった。ベルギーは植物性油脂が入っているものはチョコレートとは呼べない、と言い、それだともともと植物性油脂の入っていたキャドバリーがチョコレートだと認められなくなるとUKが反発、という話。あれは今どういう判定になったんだろう)、粉乳、水飴、香料などなど、実に色々なものが入っていることが分かる。Mast Brothers Chocolateの基本はカカオマスと甘蔗糖のみ(他に、ナッツやお塩の入るものもある)。

日本でこういう風にチョコレートを作っているのってほとんどないのかな、と思ったら
エミリーズチョコレート奥沢 www.emilys-chocolate.com 
というところがあるらしい。日本もそろそろ変わってくるだろうか。

はてさて、パッケージのお話。
Mast Brothers Chocolateはパッケージがきれい。パターンの入った紙の上に、シールを貼っただけのシンプルなものだが、中のフォイルから、外側の紙まで、全部手で丁寧に包んでいる。

Mast Brothers Chocolateのパッケージ一覧
http://mastbrothers.com/PDFs/mastbrothers_onesheet.pdf


このパターンの入った紙はイタリアのRossiの紙を使ってます、とニュースなどに書いてある。
と、言われてもRossiというのがなんだか分からなかったので調べたところ、デコラティブペーパー(包装紙などに使う、柄の入った紙)などを作っているメーカー。
www.rossi1931.it

つまり、お店に並んでいる時点でラッピングペーパーに包まれているということ。
チョコレート考4で、イギリスのDivine Chocolate、Rococo Chocolatesのパッケージについて「テキスタイルデザインのようなパッケージ」と書いたけれど、パターン化されたラッピングペーパーということなのだ。

板チョコレートのパッケージは、もちろんスーパーに並べられ競合と張り合うための広告ツールでもあるけれど、同時に買った人は自分へのギフトであるし、買った人が他の誰かにあげるギフトでもある。
日本のチョコレートは、広告ツールとしての意味合いが大きくて、ギフトという観念が抜けているんじゃないかと思う。
欧米の板チョコレートは本当にきれいな包み紙のものが多い。
一例。NYのチョコレート屋さんFrench Broad Chocolatesのウェブサイト
http://frenchbroadchocolates.com/shop/chocolate-bars

日本で高級チョコレート、贈答用となると、いわゆるボンボンショコラと呼ばれる一粒チョコレートの類が多く、箱のデザインには非常に凝っているのだけれど、シンプル極まりない板チョコのパッケージを見たほうが、そのチョコレートメーカー、チョコレート屋さんのスタンスがはっきりと出やすいと思う。

これだけチョコレート買って食べておいてなんだけど、実はボンボンショコラの詰め合わせというのが好きではない。中に何がどう入ってるのか分からないので、中味が確実に分かっているもの以外、選べないのだ。
(ボンボンショコラアソートメント嫌いは毒入りチョコレートのよく出て来るミステリの読み過ぎのせいもあるが)
フランスやベルギーから空輸されてくるおいしいチョコレートもいいけれど、これはこれでフードマイレージ的に心痛むこともある。

自分で食べてもいいし、人にもあげられる、パッケージのきれいな、値段的にもびっくりするほどの値段ではない、中間層の板チョコレートは日本に少ない、と、今回の25回に亘るチョコレート考でさんざん書いてるけど、これ、結構重要な話だと思う。

バレンタインデー限定チョコレートパッケージについていけない、というところから、今回のチョコレートリサーチを始めたのだけれど、デパ地下、サロン・ドゥ・ショコラ、チョコレート専門店、バレンタインデーギフト特設会場などに行ってみると、購買者は9割以上若い女性だった。
「友チョコ」なんて言葉が出て来るように、バレンタインデーのターゲットは女子同士、特に10代から20代、である。
パッケージのデザインもそのターゲットに合わせたのだろう、甘い、かわいらしい感じのものが多くなる。40代女性の私ですら、買うのがためらわれるようなかわいすぎるものも多い。男性だったらなおのこと入っていけない世界ではないだろうか。

海外のバレンタインデーはチョコレートに限らないけれど、男性から女性へのプレゼントのほうが重要視されているので、バレンタインデーは男性を消費者にすることで、かわいすぎるパッケージから逸脱できるのではないか、とも考えたが、現状男性は売り場にさえ近寄りがたいだろうし、自分用なのに「友達にあげるので−」「いやいや、これは娘にあげようと思ってね」などと言い訳しながらお包みされて、ついでに「お渡し用の袋も入れて置きますね」と言われながら買うのか、などと想像するとかなり苦しい。マーケティング的にも可能性のある消費者を逃していることになる。

大人の男性でも買って恥ずかしくない国産のチョコレートを望む。

余談:
他の方のブログを褒めるのも変な感じもしますが、Mast Brothers の資料を探していて行き着いた、この方の「チョコライフ」www.chocolife.info すごいなあ。
網羅してる数もすごいけど、製品の見せ所を押さえた写真も上手。
2006年からブログがスタートしたようですが、バレンタインデーの参考になるかと思います。
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by dezagen | 2012-02-07 19:46 | プロダクト・パッケージ