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反戦ポスターについて考える
ライター、渡部のほうです。

現在大学のほうの仕事に8割を奪われているので、もはやライターとは呼べないのではないかと思ったりもするのだけれど、こうしてブログに書き残すことを許されていて、読んでいる人がいる以上は、まあ、一応ライターなのだと思う。VIVA ブログ。THANKS 読者。

学生からの質問は唐突なものが多い。デザインのトレンドとも関係ないし、あらゆることに鈍感になってきている40代と比べてあらゆることに敏感だし、その日その日の授業からそれぞれの学生が受ける印象も様々なのだろう。
この前は「先生の好きな反戦ポスターは何ですか?」と聞かれた。
「……、なんで反戦ポスター、今さら?」というのが正直な答えだ(ちなみに授業でもそう答えた)

そもそもなぜその学生が「反戦ポスター」という言葉を使いたかったのかは分からない。その日やっていた授業は、1930年代から40年代のプロパガンダ雑誌、オトル・アイヒャー(戦前反ナチスとして行動)と戦時色の強い話だったので、アレルギー的に「反戦」と言いたかったのかもしれない。

むろん反戦を訴えたポスターで名作はある。ただ、それらのほとんどは展覧会かデザインメディアでしか見たことがなく、「戦争を阻止する」アピール力で考えると、ほとんど効力はない、と言える。

デザイン史を教えている立場としては「この反戦ポスターは風刺が効いていて、うまくグラフィック処理されている云々」ということはできるが、デザインジャーナリスト(さっきまでライターと書いていたけれど、その実どちらでもいい。職能としてどっちを書いたらいいのか分からない時はままあるが、さておき)の立場として、今、現在、メディアの中での反戦ポスターの効力は99%ない、としか言えない。こと日本においては。

質問を受けて、現在反戦ポスターというのがどれだけ出ているのか調べてみたが、やはりあまりない。

興味を引いたのは
Global coalition for peace.org - poster / Ambient 'What goes around comes around' (2009年制作と思われる)
作り手Big Ant International
http://bigantinternational.com/
のサイトから
work

Global Coalition for Peace
をクリックすると見れる。
太めの円柱に巻くと、自らのガンの矛先が自らに向いている、自分が投げた手榴弾が自分のところに落ちてくる、というように見えるシリーズ。

Big Ant Internationalは現在ソウルをベースにする会社だが、元はNYで勉強していたデザイナーが組んだチームだそうだ。
彼らの場合は、日本に住む日本人とは相当立場が異なる。
住んでいたアメリカはイラク戦争に介入し、2011年末にやっと終戦宣言がなされたばかりだ。韓国と北朝鮮が実際に戦闘状態に入るとは現実的に考えにくいが、その可能性がないとは言えない。
市民の声の意思表明として、このポスターが訴えかけるものに共鳴する人も多いだろう。
とはいえ、やはり、このポスターなどがあったので、2011年にアメリカはイラクから撤退することに決めました、などと楽観的なことはあり得ない。
いくらポスター自体が優秀でも、戦争の行く末を決める人々には届かない。

調べて見ると、現在戦争状態(内乱、内戦含む)にある地域はまだまだある。
外務省 海外安全ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/ ではほぼ毎日「注意喚起」「危険情報」が告知されている。
こうした「危険地域」に効力を発しているポスターがあるのだとしたら見てみたい。

ポスターそのものの効力に関しても疑問を持たねばならない。例えば授業で教えるような1970年代までの、宣伝/広報=(紙に印刷した)ポスター、という考え方はすでに終わっているのであって、現在のプロモーション活動は従来の紙ポスターに加え、TVCF、ネット媒体でのバナーやCF、HP、SNSでの活動、販促のための物語作り、タイアップなどなど、一つのものごとを伝えるのに、どれがいいかは、その内容により異なってくる(場合によってはすべてやらなければいけない)。
特定の場所にだけ貼られたポスターを、皆が見て情報を得る、という時代ではない。

と、いうようなことをざっくりと授業時間に答えたところ、生徒から「ではポスターに代わるものは何ですか?」という質問が来た。
何なのだろうか。
これは今、広告代理店ですら悩んでいるところなのだから、そうそう軽々と「これです」という答えは出せない。

思い出したが、個人的に初めて「戦争反対」で納得行った言葉は「死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対!」
分かる人はすぐ分かるのだが、スネークマンショウのアルバムのタイトルである。
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by dezagen | 2012-07-09 01:22 | その他