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Blom & Blom
ライター、渡部のほうです。

昨年末オランダに行っていたメインの理由は、Blom & Blomに会うためである。
http://blomandblom.com
彼らが扱っているのは主に旧東ドイツの廃工場などから入手した照明器具やスイッチなどの備品。

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左カミールと右マーチンのブロム兄弟。アムステルダム郊外の工房で。
ちなみにさすがのオランダ人、でかい。カミールのほうは2メートル近くあるんじゃなかろうか。喋ってると首が痛い。

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放置されていたものをきれいにし、電気系統をチェックし、整備して再度世の中に出す、という作業なので、正確にはデザイナーではない。こういうのなんて言うんだろう、再生屋さん、だろうか。

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照明、再生前と再生後(写真提供Blom & Blom)

現在はアムステルダム郊外とベルリンの工房をベースに、オンラインで小売りとオフィス向けプロジェクトを手がけている。近々、工房の近くにショウルームができる予定だ。

こちらはショウルーム予定場所での写真。
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ショウルームでスタンバイ中の製品。


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暖色系の光源を入れたもの。ストーブに見えてしまう

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ステンレス製だというが重い。でかいオランダ人の兄さん2人がかり

こちらは工房でスタンバイ中のもの↓
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歴史を感じさせるキズや穴などは残し、余計なペイントなどはしない。
20年近く放置されていたものから汚れやサビを取るのは容易ではない。ネジ、パーツをすべて分解し、きれいにしてから組み立て直す。
ほとんどの電気機器は、中のダメージは少なく、ほぼそのまま使える状態だという。ただ、工場用であったり、旧東ドイツだけで使われていた蛍光灯などの備品やパーツは、家庭やオフィスにも使える他のものに変える必要がある。

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白熱灯は大体世界の規格で対応できるが、蛍光灯が一番難しいそうで、バラスト(電圧、電流を一定に制御する機械)を変えることもしばしば。お土産のうなぎパイの箱と妙に馴染んでしまった(笑)。

2人がこのビジネスを始めたのは昨年9月。
元々カミールは映像、写真、木工を手がけ、マーチンは建築と経営を学んでおり、東ドイツの旧工場や旧軍事施設などから収集した物を修理、再生していたのは趣味の範囲だった。これを本格的にビジネスにすることに決め、1年半の準備期間を掛け「Blom & Blom」を作り上げた。

実際旧東ドイツの遺品(工業製品から生活用品まで)をアンティークとして売り出すビジネス自体は新しいことではない。照明器具に限っても、他に
360volt www.360volt.com
trainspotters www.trainspotters.co.uk
といった競合ビジネスが存在する。

Blom & Blomが際立っているのは、ブランディングのうまさ。
1年半の準備期間、製品を揃える以外に、ロゴ作り(ベルリンをベースにするデザイン事務所 HelloMe が作成  http://tillwiedeck.com )
やウェブサイトのデザイン


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ビデオ(これが秀逸)
http://vimeo.com/47231123
もしくは こちらのページの下のほうで
http://blomandblom.com/about/

こうした会社のイメージ作り、いわばコーポレートアイデンティティの基礎固めをしている。
アンティーク、中古品、ジャンクと呼ばれる物は、工場からできたての製品とは異なり、過去に誰かが使い、どこかに存在していたものである。
新品の製品にはない形や色の魅力だけでアンティークや中古品を買うこともあるだろう。むしろ背景を知らないほうが、想像が促されて面白い、という考え方もある。ただ、それではアンティークや中古品は、新品のもの、例えば歯ブラシやノートと言った日用消耗品と変わらない消費サイクルの1つになってしまう。
むろん、あらゆるものは消費のサイクルにあるのだが、そこに過去の背景を感じることで、物の意味、価値は変化する。
Blom & Blomは印象に残る写真とドキュメンタリービデオで物の背景、朽ちた施設に対する彼らの愛情や情熱をしっかりとユーザーに伝えている。そして、彼らが救済しなければこれらの施設は朽ち、壊され、ゴミとして消えていくことも。

先に書いたように、彼らのビジネスは始まったばかりであり、競合がすでに存在する。
アムステルダムの工房は実家、父親が使っていたもので、新しくできるショウルームも以前肉屋が解体作業に使っていたスペース。会社というよりは家庭内手工業のレベルではある。

旧東ドイツの遺品はいずれ枯渇してしまうのだろうし、彼ら及び競合のビジネスも例えば10年、20年後どうなっていくのかは分からない。しかし、物に対する愛情があり、いかに物と接し、どう見せればいいのか知っている彼らであれば、この次のステップに進んでいけるのではないだろうか。
幸い滑り出しは順調なようで、ヨーロッパ内外からの注文も続き、今後はさらにスタッフを増やす予定になっているという。

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by dezagen | 2013-01-04 13:05 | インテリア