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『書棚と平台』を読んで思ったこと
ライター渡部のほうです。

というか、学校の先生のほうの渡部です。
今、来学期の授業のため、本の流通に関しての本をまとめて読んでいる。
『書棚と流通』(柴野京子著、弘文堂刊)は読みやすく、かつ資料性が高い
http://www.koubundou.co.jp/books/pages/55128.html

2009年に出された本なので、既読の方も多いかも。
日本の書籍流通がいかに形成されたかを追った歴史の本なのだけれど、システム確立を俯瞰で追うだけでなく、江戸期書店の成り立ちから、個人商店、出版社経営者の声、記録も細かく記載されている。

私が特に興味を持ったのは「開かれる購書空間」の項目。
書店での本のレイアウトが、平台にディスプレーし店員が手渡しする方式から、徐々に開架の本棚になり、客が自由に自分の読みたい本を選ぶようになり、図書分類が始まり、書店独特の家具が作られ、さらに選びやすい方式へと変化していった、という話である。
書店ではスーパーマーケット普及以前に「客が自主的に自分で選ぶ」方式を確固とさせていたことが分かる。

本書でも触れられているが、書籍の流通は書店ではなくオンラインでの販売に移行している。
オンラインの書籍販売が日本で始まった頃、書籍は内容を買うものだけに、カバー写真と簡単な説明だけで買うのは難しいと思っていたが、送料が無料になった頃からオンラインでの購入が急激に増えている。
結局のところ、客が自主的に選んでいたものなので、意外に買う場所にこだわる必要はなかった、ということだろう。
(それ以前に、流通システムが内容にかかわらずどんな本でも均一に売るよう書店に卸していたため、どの本屋も同じような内容、ということは本書に詳しく書いてある)

ここから下は私感だが、自分でもオンライン(特にアマゾン)で本をすんなり買うようになってしまった理由に、わざわざ本屋に足を運ぶ面倒くささがないという自分の出不精によるところも大きいが、新刊書店屋に魅力がないのが一番の理由のような気がする。

その点、海外の書店はまだ魅力が多いように感じている。海外の書物に触れる機会が少ないのだから、物珍しさも手伝うのだろうが、特にイギリスと(言葉が通じた場合)ドイツは、「これこれこういう本を探している」というと、店員が「これですね」と探してきてくれる。

今のイギリスは書店がどんどん減っていて、事情が異なりそうだが、私がロンドンにいた1990年代半ばのFoyles(イギリスで最大のフロア面積と蔵書数の書店)では、フロア担当がその道に通じた「濃い」人ばかり。
こっちの持っている情報がうろ覚え、コンピュータで言うところの曖昧検索でも、「これですね」だけではなく「これじゃないですか?」とアドバイス付きだったり、本のコストパフォーマンスの話をしてくれたり(こっちは図版が多いけど信用性で言うなら他の本がいいとか)、私の英語レベルから本の選び方、読み方(次はこれがいいとか)の指導までしてくれたり、ほとんどあり得ないことだが棚にないときは他の専門書店を奨めてくれたり。すごい本屋だった。

書店員がまるで昔のSF映画に出て来るロボットのようだ。というとバカにしてるように聞こえるかもしれないが、店員が信頼できるのである。
と思っていたら、こんな記事を見つけた。

書籍大国ドイツの出版業界、その流通・経営・制度・人材育成の特徴
http://mediasabor.jp/2008/04/post_355.html

ドイツでは書店員になるために資格が必要、というところに驚いた、というよりも、納得した、というべきか。
2008年の記事なので今は事情が違うかもしれないが、仮にこのシステムが変わっていたとしても、素地はできているだろうから、書店員への信頼はほとんど変化していないと思う。

またヨーロッパでは(おそらく日本以外ほとんどの国では)本を取次業者に返品することはほとんどないはず(今まだ調べている途中)なので、書店のバイヤーが責任を持って、自分達が売れる本を買い取る。

日本は本の返品が可能だし、書店員になる資格もない。
私は大学の時に書店でバイトをしていたが、かなり大型の本屋だったので、フロア担当も人事異動で時々変わる。そうすると、それまで経済の本棚はしっかり把握していた人が突然コミックの担当になって、客のほうが並びを把握している、なんてこともザラにあった。
となると客にとっての店員は、レジを打つ人、本棚を整理している人、になってしまう。
この書店には本当にお世話になったのであんまり悪いことは言いたくないけど。

日本の書店衰退を食い止める方法として、「濃い」店員が1つの打開策になるんじゃないか、ドイツを見習って書店人資格の採用を、と私は真剣に考えている。
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by dezagen | 2013-08-12 13:00 |