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東京造形大学でのプロジェクト授業
ライター渡部のほうです。
というより、大学教員渡部のほうです。

5月5日にこのブログでもアップした、イギリスRCA(Royal College of Art www.rca.ac.uk ) のサラ・ティズリーさんと、東京造形大学の渡部千春の共同研究を引き続き行っている。

参照:RCAでのプロジェクト授業
http://blog.excite.co.jp/dezagen/20387816/

先月アップできなかったので、内容は少し古いものになっているが、7月14日から21日に掛けてのプロジェクト授業/ワークショップについての備忘録。

テーマは「1990年代を中心とする現代デザイン史」。
今回、7月のプロジェクト授業は、サラさん来日に合わせ、東京造形大学で行った。
前回のRCAでのプロジェクト授業では、現代デザイン史をどう調べ、検証し、作るか、に焦点を絞ったが、今回は、1990年代にあったデザインのできごと、を再検証することに焦点を絞った。

参加者は東京造形大学及び大学院の学生を中心に、外部からも希望者を募った。
第一回は7月14日(日)。場所は、桑沢デザイン研究所にある東京造形大学のサテライト教室で行い、90分×2コマ、渡部が「グラフィックデザイン史」で使用しているスライドを見つつ、参加者と1990年代のデザインについてランダムに話す、修正点、追加点をスライドに加えていく、という形式で行った。

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参加者は大学院生2名、学部生3名、外部からは、フリーランスライターの上條桂子さんと、nendoのマネージメントを行っている伊藤明裕さんが参加してくれた。
大学院生2名はプロジェクトの準備、雑務なども手伝ってもらいつつ、内容に参加してもらっている。
教員2名も合わせて合計9名。人数的にはこじんまりとしたワークショップだったが、人数の少なさが好転して、むしろ密な内容になったと思う。

スライドは「グラフィックデザイン史」で使われるものだけに、ややグラフィック重視にしたものだが、基本的にデザイン史はグラフィックもプロダクトも建築も相互的に関係しつつ発展しているので、内容は領域を横断したものとなっている。

特に話題が集中したのは、デザインイベントと、DTP化。時代は2000年代の話になるが、ラピッドプロトタイピング(3Dプリンターなど)導入について。

2回目は7月21日(日)。東京造形大学にて。14日で話されたことの報告と、再度、参加者からの90年代に関する考察を発言してもらう形で、1時間行った。
オープンキャンパスの公開授業の一環として行ったため、東京造形大学の大学生、大学院生、教員、オープンキャンパスに来校した高校生や一般の方、と前回に比べ幅広く、30人近くと多くの方に参加いただいた。

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21日に新たに上がった項目として、プリクラ、Yahooキッズ(小学生時代のコンピュータ教育)、レコードジャケットからCDへの移行などがあった。

また、この2回のワークショップの間、日本のデザイン関係者(デザイン誌編集者、デザイン団体)4人の方に、お話を伺った。
この詳しい内容については、後日、まとめた形で報告したいと思う。

2回のワークショップと4回のヒアリングを通して、強く感じたことは、世代の違い、立場の違いにより1990年代を見る目、記憶しているかつ注目するべきデザインのできごとが、かなり異なるということ。
むろん、デザイン史のどの年代を切り取っても、人により見方が異なることは当たり前なのだが、80年代くらいまでは、概ね「これが大きな出来事だった」ということが共通であるのに対し、90年代になると、非常にバラける。

例えば、DTP。
これまで世界のDTPの導入は80年代末に始まり、90年代半ばに普及、末にはほぼ定着と考えていたが、実際に雑誌を出版する側でも、90年代半ば、早々に完全DTP化を計ったものもあれば、2000年代に入るまでDTP化しなかった雑誌もある。雑誌を担当するデザイン事務所のデザイナー/ADが、当時コンピュータに慣れていたか、慣れなかったかにより、かなり時間差が出たようだ。
当時DTP化の進んでいた欧米に視察、その後の導入のための予習を行っていた人々もいれば、全く拒否という人々もいる。

また、90年代は何もなかった、と捉える人も多かった。
経済の低迷により、デザインが関わる仕事が減り、予算が減ったために思い通りのプロジェクト進行ができなかったり失業するなど、あまりよい記憶がないという人もいる。
一方で、社会問題が浮き彫りになったために、ユニバーサルデザインに代表されるような問題解決のためのデザインに移行する時間となった、とポジティブに捉える人もいる。

80年代末、90年代に生まれた大学生、大学院生からは、これまで渡部、ティズリーとも気がついていなかった、子供向けのデザイン文化及び項目が上がっていた。

90年代というのは、皆、同じ時代を生きながら、それぞれ子供は子供、大人は大人、日本人は日本人、PCが使える人、使えない/使わない人、でかなり違う文化を感じていた時代のようである。

それぞれの項目に関してさらに詳細を詰めると共に、文化、世界観の分化を捉えつつ、整合性のあるデザイン史を作ることが、新しい課題になってしまった。
次回のワークショップは9月のロンドンデザインフェスティバルの時期に、ロンドンで行う予定である。
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by dezagen | 2013-08-20 03:54 | その他