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『日本ブランドが世界を巡る』終了
ライター、渡部のほうです。
地味ながら、約5年(62回)続けてきた日経デザインの連載、『日本ブランドが世界を巡る』は来月の12月号で終了。
原稿も入稿して、一段落というところ。
今月の11月号と、次号とでこれまで5年間分のまとめを書いたのだが、書き切れなかったというか、余談的過ぎて入れなかったというか、そんな話を。

『日本ブランドが世界を巡る』がスタートしたのは2008年8月号から。
当初の目的は、海外に行くと車や家電以外の、日用品や食品の分野でも日本の製品が色々出ているのだけれど、割と国内でも知られていないので、そのパッケージの違いなどをコラム風に紹介したい、というものだった。
下川編集長にその話をしたのは、連載スタートよりかなり前だったのだが、なかなか通らず、でもしつこく粘って話していたら、やっとOKが出た。が、そこは目と鼻の利く下川編集長だけあって、企画の甘さをビシっと指摘されたのだった。
確か
「面白おかしい話にしないで、ちゃんと、パッケージがこう変わったから、この国や地域で受け入れられている、という確証を入れること。世界市場を狙った日本のメーカーの参考になるような記事にすること」
というような指示だったと思う。

確証を、と言われてもなー、と思いつつ始めたのだけれど、売上額やパッケージの変化による消費者心理の違いなど、データがあまり出てこないことから印象論でまとめてしまったことも多々。
その辺は、マーケティングを軸とするデザイン誌=日経デザイン、という媒体ではやっぱりツメが甘かったかもしれない。

とはいえ、今の日本の製造業の様子を見ていると、やはり国内市場だけではなく、世界(主にアジア市場)に出て行かざるを得ない状況になっており、前例を知るにはいい企画だったのではないかと自分でも思っている(やや自慢)。
確かにそこにデータなどが入って、びしっと言い切る、日経ビジネス並の説得力があればもっとよかったのは否めないんだけど(やや反省)。

さておき、5年間も連載をやって、国内にあるメーカーの取材だけでなく、ネタを探すために自分でも旅行に行ったりしていて(数えてびっくりしたが、連載企画を思いついた前段階も含め、2005年〜2013年の8年間、53回海外に行っていた)徐々に分かってきたことがいくつかある。
その中でめぼしい話は、日経デザインの11月号と12月号に書いているので、繰り返し感もあるけれど、かなり気になったのは

1) 日本だけ常識が違う、ということが多くあること。
2) 個々のメーカー、ブランドがそれぞれに評価を得たり、ということはあるけれど、総合して「日本」「made in Japan」のブランド感というのは。日本人が思っているほどはない、ということ。
3) 世界的に韓国のブランド感が高まっていること。

という点。
総括すると、客観視に欠けている。

いや、まとめすぎかも。
客観視できているメーカーやブランドは強いけれど、日本を基準に考えてしまうと(例えば、日本の高品質に海外が「着いてこない」と考えてしまう、とか)どうもおかしなことになってしまう。

話をがらっと変えます。

私はイギリスのテレビドラマ(主にミステリもの、歴史もの)が好きで、ヒマが出来るとがーっとDVDまとめ見をしたりするのだが、最近の出物が『Ripper Street』
www.bbc.co.uk/programmes/p00wk6pq

1889年のロンドン、イーストエンドの警察署が舞台。ちょうど切り裂きジャックの連続殺人事件が起こって半年後、という設定。
イギリス人の刑事2人とアメリカ人外科医の3人がメインキャラクター。
もっと詳細な解説はこちらで
http://mystery.co.jp/program/ripper_street/midokoro.html

このドラマがうまいなーと思わせるのは、イギリス人に向けたイギリスのお話、ではなく、海外に向けて作った客観的に見たイギリスのお話を「作り上げている」ということ。
実際、イギリスのBBCとBBCアメリカの共同制作で、当初から海外向けを念頭に置いている。

ロンドン設定だけれど、湾岸に近く、船でやってきた外国人も多い(裕福な人もいれば、着の身着のままで逃げてきた亡命者もいれば、様々)。メインキャラクターの中にアメリカ人が置いたことで、イギリスらしさが引き立つ、という方法。
スピードのある話の展開や、コスチュームや大道具、小道具の作りなどディテールも素晴らしいのだけれど、目線を「外国人」にしておくことで、当のイギリス人が普通すぎて取りあげなさそうなものもきちんと伝えている。

『Ripper Street』を見ていて、改めて感じたのは、国のブランド感を上げる手段として、映画、ドラマ、音楽、小説、この4つはかなり大きい、特に映画とドラマは複合的に、かつ分かりやすく浸透する、ということ。

悲しいかな、現在のイギリスの製造業はボロボロである。
(上等なツイード、陶磁器、自転車、紳士用品、など細かく見て行けば、まだ輸出できるものもあるけれど)
ブツとしてイギリスすごい、と思わせるものは少ないものの、それでもイギリスというブランド力は強い。
映画、ドラマ、音楽、小説などで文化をガンガン輸出して、イギリスのイメージをコンスタントに世界にお届けしているからなのだと思う。

それが必ずしも今の現実のイギリスと合致するとは限らない。
007みたいなイギリス人に会ったことないし、ホテルのアフタヌーンティーを楽しんでいるのは日本人や中国人やアラブ系の人々だし、すえたビールの香りのするパブはもうなかなか見当たらないし、Ripper Streetに描かれるような陰鬱なロンドンを探しに今のイーストエンドに行ったところで、お洒落なセレクトショップや小物雑貨のお店と、アルチザンコーヒーのいい香りにぶち当たって、肩すかしを食らうだけであろう。

それでもイギリスのブランド力が高いのは、繰り返しになっちゃうけど、映画、ドラマ、音楽、小説など文化を売り、イメージを売り続けているからである。

で、日本はどうか。
海外で普通に上映されている日本の映画は?
村上春樹のようなインテリ向けではなく、一般的に読まれる小説は?
ない。全然ない。
その代わり、アニメと漫画は売れている。

海外から見て、今の日本、あるいはmade in Japanは、アニメや漫画で作られたファンタジーワールドとして評価できるけれど(全然見てない人もいるにせよ)、その世界観と、日本の製造業が謳う高品質が合致していない、不思議な国である。
ただうちの繊維は質がいい、うちの金属製品は仕上げが美しい、と言ったところで、その背景にあるストーリー性を作り、見せなければ、なかなか消費者はイメージしずらい。

韓国はその点、うまいなーと思わされることしばしばなのだが、その話はまた別の機会に。
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by dezagen | 2013-11-11 02:03 | その他