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ノルウェーのデザイン事務所 permafrost
ライター渡部のほうです。

GWを利用して、ノルウェー、オスロに行ってきた。
このデザインチームに会いたかったから。
permafrost http://permafrost.no

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Oskar Johansen, Tore Vinje Brustad, Andreas Murray, Eivind Halseth.
(ノルウェー人の名前はカタカナ表記が難しいので、以下アルファベットです)

彼らには8年前東京で、昨年ロンドンのデザインイベントで会っている。
ロンドンでは、ニュースレターで「今年のロンドンデザインフェスティヴァルのノルウェー展示『100% Norway』ではこんなものを展示します」というインビテーションをもらい、写真の作品の実物を見に行った。
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北欧名物アーキペラーゴ、を木製玩具に。

これらの木製玩具のシリーズは2012年に開催されたデンマークのルイジアナ美術館での展覧会『NEW NORDIC Architecture & Identity』http://en.louisiana.dk/exhibition/new-nordic での出品作品から始まった。この展覧会は、建築作品の紹介の他、デザイナー、アーティスト、料理人など様々な分野でクリエイティブに活動する人々に各自60cm×60cmのスペースが与えられ、その中で「各自が考える北欧のアイデンティティ」展示するというもの。
permafrostは北欧が昔から得意とする木工を活かした玩具を作った。通常木製玩具というと、この半世紀以上変わらないような、家、車、船、といったところに落ち着きそうなところを、現代のノルウェーを象徴する油田やタンカーの形にしているギャップに彼らのユーモア心が垣間見える。

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彼らの活動の面白いところは、木製玩具(これからシリーズを増やし、NORBOという名前シリーズになっていくとのこと。NORはNorway/Nordic 、BOはノルウェー語で住むの意)のような素朴なプロダクトも作りつつ、ストッケのベビーカー、ベビーチェアや釣り具のような非常に複雑なインダストリアルデザインも手がけているところ。
彼らは同じ大学 The Oslo School of Architecture(現The Oslo School of Architecture and Design)の卒業生同士で、デザインの活動を開始したのは大学卒業と同時の2000年。
「これといった就職先もなく、卒業したばかりですぐ仕事が来るわけでもない。友達に聞いたりしながらグラフィックの仕事からインテリアから、できることは何でもやりました」と、Toreさんは言う。

その後、2004年からミラノサローネなど国際的な展示会に出展。自主制作品としてカーペットを選んだのは「飛行機ですぐ運べるから」とAndreasさん。「家具も出したいと思っていたのですが、輸送コストを考えると車で運ぶしかなく、簡単に運べるカーペットに行き着いたわけです」
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「カーペットもグラフィックデザインだと思っています。ただ厚みがあるグラフィックですね」(Andreas)
プロダクトの世界ではいきなり若手新人が量産品を作るのは無理に等しい。その点、建築を勉強しつつもグラフィックの感覚があった彼らは有利だったと言えるが、彼ら自身プロダクトはプロダクト、グラフィックは別モノ、というように分けて考えておらず、グラフィックもまたプロダクトを作る一つの要素、として捉えている。

日本を含め海外の展示会に定期的に出し、permafrostは高い評価を受け、徐々にクライアントからの依頼が増え、仕事の幅が増え(かなり時間的にはしょってしまうが)現在に至っている。

「仕事をし始めた時から、仕事は生活費を稼ぐため、かつ自分達の作りたいプロダクトも作る、という意識がああるのですが、徐々にそれが融合していくのが理想です。STOKKE STEPSの仕事は、クライアントから来た仕事ですが自分達のデザインを活かせた、理想に近い製品だと思います」(Tore)

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STOKKE STEPSは新生児から3才くらいまでの幼児向けに、段階的にアタッチメントを変えながら使える椅子。ストッケの有名な製品トリップトラップの考え方に近いが、新生児から使えるようになっているところが異なる。
最初は地面に付けるタイプのベッド式。子供の荷重と動きで柔らかく揺れるため、大概の子供は眠ってしまうそうだ。このベッドは椅子に装着することができる。
次の段階はベッドではなく椅子に座る方式。専用テーブルは着脱可能。6ヶ月くらいから使えるが、徐々に子供も大人と同じテーブルで食事をしたくなる、というときに専用テーブルを外す、という流れ。
最終段階は安全ベルトがなくても自分で椅子に座れる子供向け。大人でも座れるサイズではある(が若干バランスが悪いので基本的には大人用ではない)。

このプロジェクトでは、5段階の組み合わせを考え、サイズ、安全基準など「乳幼児が座るもの」として必要不可欠かつ安全なデザインを作る、ということが大きなチャレンジだったが、ディテールにpermafrostらしさが見える。
例えばテーブルや座面の下。見えないところだが、少し膨らんだようにカーブを作っている。アタッチメント用のネジも適度に大きく、掴みやすく、かつ角度が90度になるところは角を丸める、など全体的に大人も子供も触るものとして、柔らかい触り心地を求めたためだ。

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「僕たちは本当に基本となるものはなにかを常に考えています。余計なものをなるべく排除して、自ずとシンプルなものになるのだけれど、その中にフレンドリールッキングな要素も不可欠だと思っています」(Tore)
「フレンドリー」という言葉をプロダクトに使う時、通常「ユーザーフレンドリー」のように、ユーザーに分かりやすく、使いやすいデザインという意味であって、ユーザーに対して「友達のように親しい」ことまでは望まれていないが、permafrostの言う「フレンドリールッキング」は、単に分かりやすい、使いやすいだけでなく、友達のように接したくなる、触れたくなるような優しさが含まれているように感じる。

permafrostの仕事とやりたいこと、プロダクトとグラフィックが融合した好例としてもう一つ。

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AQ New Norwegian Aquavit https://www.facebook.com/NewNorwegianAquavit のアクアヴィット(芋を原料にする蒸留酒。北欧焼酎とでもいいましょうか)。
アクアヴィットを作っているオーナーに「新しいブランドを作ろう」とpermafrostから声を掛け、ボトルデザイン、グラフィックデザインも手がけた。左から「エクストラファイン」「クリスマス用」「夏用」のアクアヴィット。
XQはエクス(X)トラ・アク(Q)アヴィットの略、XXQはエクストラ・クリスマス・アクアヴィット、SQはサマー(S)・アクアヴィットの略で、通常「アクアヴィット」の略であれば頭文字の「A」を使うのが普通だが、ノルウェー語ではQのアルファベットを使うことは非常に珍しいため、アイキャッチとしてあえて「Q」を選んだ。Qを構成する丸と、右下に付く柔らかいストロークで紐や縄のような効果を出している。
文字の下にある波線はエクストラファインでは樽熟成を意味する樽の並んだ様子を、夏用ではその線をひっくり返しただけだが、夏の波の形となっている。
キャップに木を使い、ボトルの形は肩に丸みを持たせ、全体の柔らかな印象をまとめている。夏用のボトルの首が非常に長いのは、ボトルから注ぐ時にトクトクトクという独特な音を楽しむため。

ノルウェーでは酒類(アルコール4.8%以上)の入手が非常に難しい。免税店もしくは専売所のVinmonopoletで買うか、バーで飲むかの3択である。酒類自体の価格も高い。国内での広告も禁止されている。酒であれば一定量は確実に売れる、という状況だけにパッケージデザインに頑張る必要はないとでも言うように昔ながらのデザインを続けているブランドが多いが、徐々に「大切な時間を楽しむもの」としてパッケージデザインにもこだわる酒類(アルコール4.7%以下のものも含め)が増えてきたように感じる。
AQ New Norwegian Aquavitのように新しい価値観を持った少量生産のメーカーが増えてくれば、ノルウェー人のお酒の楽しみ方も変わっていくのではないだろうか。

permafrostの活動はゆっくりではあるが、デザインにできることを丁寧に考え、作って行っている。
私がなぜ13時間のフライトを使ってまでpermafrostに会いたかったのか、実は行くまでよく分かっていなかったのだが、実物が見たい、これに尽きると思う。情報が溢れ、写真を見ただけで疑似体験したような気になってしまい、実物を見る経験が比率として減っている。彼らの作品は、写真を見ただけでは分からない「触り心地」や「重さ」「製品とユーザーの近さ」を感じたい、と思わせる。デザインを実体験する重要性に改めて気付かされた旅だった。

製品写真: Johan Holmquist
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by dezagen | 2014-05-06 14:29 | デザイナー紹介