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中村至男展と仲條正義展
ライター渡部のほうです。

1月13日から銀座で始まった2つの展覧会。
1つはクリエイションギャラリーG8の『中村至男展』(2月16日(木)まで)、
もう1つはギンザ・グラフィック・ギャラリーの『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』(3月18日(土)まで)。

仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000683


中村至男と仲條正義。
(以下、時々敬称略)
言っていいのかどうかよく分からないけど、普通にグラフィックの仕事を頼みづらそうなグラフィックデザイナーランキング多分5位以内の2人。だって、普通に文庫本の装丁(文字組込み)とか、コンビニで売る飲料のパッケージデザインとか、この2人に頼んだらどんなものが出て来るか全く予想が付かない。

逆に言えば、予測の付かないものが出て来るのがたまらない面白味であるところの2人だ。
まずは中村至男展(グラフィックデザイナー歴25年にして初の個展!)のほうに足を運ぶ。

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入っていきなり、多分、龍。多分、新年っぽい。
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でも今年酉年だし、何なのだろう…。とりあえず自分の理解できないものは後で中村さんに話を聞こう…。

壁を隔てて、二部屋+小部屋からなるG8の手前は新作。奥の部屋はこれまでの作品からの抜粋。一番奥の小部屋はデビュー時、ソニーエンターテイメント在籍時(1990〜1997年)から大体2000年くらいまで。奥に行くほど中村至男の原点に近づいていく、という仕組み。

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とりあえず奥までずんずん見て行く。
ああ、懐かしいな「携帯電話サイト「うごく-ID」(2000年)」

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の、小さい画面!
自分の名前等を入力すると、4コマもしくは5コマのアニメの中に名前の文字が登場する、というもの。とても小さいギミックがむしろ新鮮に思えた。
小さい画面だとやれることに限度があると思っていた時に、むしろこの限度内に収まっているからこその面白味を見いだしたものだった。

要素が少ない、というのは中村至男の特徴の一つだ(明和電機などの例外はあれ)。グラフィックの要素をギリギリまで削ることで、純粋に「見る」ことの面白さ、「発見」の驚きの強さを増す。

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例えばこの新作シリーズ。
手前のケーキのグラフィックは本展のポスターにも使われている、メインビジュアルでもある。ぱっと見るとホールのケーキを切った、ハッピーなグラフィックだけれど、よく見ればロウソクも切れている、火も半分に切れている。
現実ではこんな風には切ることができない。ひょっとしたら、すごい切れ味の真剣で剣士の師範の人に切ってもらったら、こういう切り方が出来るのかもしれないけれど、それを人間の目で見ることはできない。ひょっとするとありうるのかもしれない、それが目に見えないだけなのかもしれない。こんな疑問を起こさせる。
これにもっと説明的な、例えば上述したような剣士を書き入れたりとか、こんなのないよね、というような説明文が入ったとしたら若干しらけてしまう。
何も説明ないからこそ、自分の目で見たことでやってくる突然の驚きのインパクトが強い。
隣のグラフィックは水滴が指の間で止まっている。これはひょっとすると高性能写真で捉えれば撮れるのかもしれない。だが、中村至男特有のシンプルなまっすぐな線で描かれ、とても停止している。永遠にこれが続くのではないかと思う。
中村至男のグラフィックは時々、こんな風に見ている人を驚かす。

過去25年分(!)のグラフィックを集めて見ると、過去のものはより説明的だったようにも見える。
毎日広告デザイン賞に応募した1990年代前半の「としまえん」の作品は
(反射が見え見えで作品自体見にくくてすいません)、
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普段見慣れた原稿用紙なのに、くるん、と回っている。そして「としまえん」の文字を見ることで「ジェットコースターなんだな」と思う。これも非常にシンプルな手法で人を驚かしたグラフィックだったけれど、最近の作品に比べると「原稿用紙だよね」「回っているよね」という、明らかさ、が際立っていた。
今はもっと要素を削いでそれを伝えている。修練のなせる業だと思う。中村至男の作品はさらっとしていて簡単に作られたように見えるが、余計な要素をコンマ1ミリでも減らし、ギリギリのラインはどこなんだろう、と徹底的に最後の瞬間まで悩み続けてやっとここだと選ぶ。
そんな苦労が見えないところも中村風ではある。

ちなみに、前述の「龍」。
中村さんに聞いてみたら「ベクターで龍を書いてみたかった」とのこと。
なるほど。
「イラレってごくたまにソフトのバグで線が割れたり、バリがでたりするんですね。ベクターデータの第一メデイアとしてのマチエル(筆ムラや滲みかすれような)で質感を表現できないかなあ、、と前から思っていました。」
とのこと。
予想の付かない面白さで、今のソフトだから出て来る面白さで何かを表現できるか、そんなところに進化しているようだ。
って、技術が未熟だからこそ面白かった「うごく-ID」とも近いのかも…。まだまだ研究が足りないなあ。

G8で満喫した後に、中村至男展とスタンプラリーも行われている『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』へ。

もうこのタイトルだけで、何が出て来るやら…ドキドキワクワクハラハラするのだけれど、何が出てきても、もう仲條世界に入っていくしかないなあ、とも思うなあ、と想像していたら、やはりそうだった。

本当に圧倒されて、ブログに書こうと思いつつ写真を撮るのをほとんど忘れていたので、公式の会場写真はこちらで堪能して下さい。

1階の新作ポスター群(22点)は「MOTHER & OTHERS」がテーマになっているのだが、
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どこら辺がMotherでどこがOthersなんだろうか、とか、こっちが考える隙も与えず、勢いのあるグラフィックが目に飛び込んでくる。
仲條正義のグラフィックは言葉にするのが難しい。説明もしにくい。
写真の右端のグラフィックを見て、ライター歴24年の私の頭に浮かんだ言葉は

「ポッポー!」。

これだけ。
本当にこれではライター失格なのだが、多分バカボンのパパなら「これでいいのだ」と言ってくれると思う。
そして地階は仲條正義がエディトリアルを手掛けた『花椿』のページが平台というか斜め台というかの台にがーっと並んでいる。
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なんでファッション誌に力士なの?とか、考えても分からない。

デザイン系のライターとしてはデザインを解読したり、説明したりすることが仕事であり、また自然とそう向き合うものなのだが、仲條正義の作品に対してはもうこっちとしてはそんな努力はしない。
出てきたものを受け入れるしかない。
見て、その迫力に圧倒されてしまうので、受け入れます!という姿勢になってしまう。

ブログ読者には悪いが、仲條正義の世界感は言葉に出来ないので、とにかく期間中にgggに足を運んで、圧倒されて来て、と言いたい。

中村至男と仲條正義の展覧会に共通するのは、意外性とそれを受け入れる喜び、だろうか。
今、私は美術系の大学の先生という仕事もしているので、きれいな文字組だとか、人に理解されるための構成とか、グラフィックのお作法を一生懸命教えている立場ではある。
だが、たまにこうした「お作法」からぐっと突き抜けて「先生」の予想の付かないものを見たくなる。ルール度外視(じゃない場合もあるけど)で、ただひたすら見ていて生理的に気持ち良いもの、考えなくても頭の中で楽しくなってしまうもの、そんなものがもっと見たい。

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by dezagen | 2017-01-19 16:28 | 展覧会