ライター渡部のほうです。
プライベートブランドにおける「安さ」感というのはどのように演出されるのか、考えてみる。
これは、イギリスのセインズブリーズのジャファケーキ。日本であんまり馴染みのないお菓子だが、クッキーみたいなケーキみたいな生地にオレンジジャムが乗り、その上にチョコレートコーティングされているもの。左がSainsbury's Basicsという一番安いライン。現在の価格を調べてみるとSainsbury's Jaffa Cakes, Basics 135g £0.60 (£0.44/100g)右は中間価格帯ラインで、Sainsbury's Jaffa Cakes x12 135g £0.75 (£0.56/100g)(写真には映っていないが、ナショナルブランドと比較すると、McVitie's Jaffa Cakes x12 141g £1.25 (£0.89/100g))
調べていたら、様々なジャファケーキの価格比較ページが出てきたので参考まで。2014年のもの。http://www.thevalueclub.co.uk/2014/10/today-i-did-buy-in-of-jaffa-cakes-sold.html
Basicsと中間価格帯(プレミアムラインのJaffa Cakeはなかった)では、印刷は実際にはどちらも4色を使っていると思うが、Basicsは白地が多くジャファケーキのイラストも外観だけで「そっけない」感じ。中間価格帯のものは下地にオレンジ色を敷き、ジャファケーキは中が分かる切り口があり、写真を使っている。
こちらはフランス、モノプリのクリームクレンザー。2016年。左側の黄色いボトルが Monoprix P'tit Prix という低価格帯。 750 m 1,00 €隣の緑のものが Monoprix の中価格帯 ブリーチ入り 750 m 1,13 €
真ん中の白いボトルはナショナルブランドの Cif 750 m 2,27 €、隣の緑はCif ブリーチ入り 750 m 3,00 €と表示されている。
モノプリの低価格帯はすべて、ベージュの地色にオレンジの手書き風文字+イラスト、で統一され、いかにも印刷費もコストも削減しました、という感じがする。中価格帯は文字を特徴的に使い、強い印象があるが、低価格帯のものと同じボトルを使い、特別容器を使わずにコストを削減していることが分かる。一方、ナショナルブランドのcifはオリジナルの容器(どこから見ても左右非対称な、作りにくそうなボトル)を使い、ラベルもグラデーションを多用したイラストだ。
スーパーマーケットという場では、そっけないデザインが安そうに見え、複雑で凝ったデザインは高そうに見える、とも言えるが、かならずしもそうではない、というのを次のブログで書こうと思う。
前のブログで取りあげたテスコの紅茶も、このセインズブリーズ、モノプリも、価格帯が違うラインで、同じ会社とは思えないほど異なるデザインを起用している。それぞれの対象が異なるためである。仮に同じ消費者であっても、その時の金銭感覚や、自分用なのかお客様向けなのか、などで異なるだろうが。
実際に商品を買う時は、パッケージデザインと価格だけで選ぶのではなく、中の品質、使い心地、食品ならその味、など様々な要因から結果が導き出されるのだが、パッケージと価格のバリエーションは、スーパーマーケットという場の中にある商品のヒエラルキーを作っている。このヒエラルキーの幅は、選択の幅であり、同じ店の中であっても消費者個人個人が「私は今、これを選ぶ=この位置にいる」という選択がより多くなるようにできている。ラインによりデザインが異なるのは、「これを選ぶ。あれではない」という選んだ物と選ばなかった物との差異をはっきりとさせる役割がある。