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渡邉良重さんの展覧会
現在、アートディレクター/グラフィックデザイナーの渡邉良重さん(以下敬称略)の作品展示が2か所で行われている。

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クリエイションギャラリーG8
第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 「絵をつくること」

OFS gallery (OUR FAVOURITE SHOP内)
渡邉良重原画展

まずはG8へ。
大きく3つに別れている会場の構成は、各展示者の意図の出るところでもある。
今回は、まず受賞作の洋菓子ブランド「AUDREY(オードリー)」のパッケージデザイン、次の部屋では「D-BROS」、洋服のブランドCACUMA のプロダクトや、イラストを提供している絵本作品、最後の奥の小部屋では刺繍作品と KIKOF の陶器が並んでいる。

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1番目の部屋。苺とチョコレートをメインにする洋菓子ブランド「AUDREY」のパッケージがまるでショウルームのような真面目さでずらりと並べられている。写真には映っていないが、壁とガラス面にはメインビジュアルとなるイラストレーションが大きく描かれている。


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2番目の部屋では、作家性の出やすいプロダクト。作品のほとんどはアクリルケース越しに見る仕組み。

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最後の小部屋。ここはもともとがドアが小さくスペースも狭いので、なんとなく秘密の小部屋っぽい。刺繍、焼き物という作家性も職人の手業も感じる濃密な世界となっている。
3部屋共通で、蛍光ピンクの梁が使われているのだけれど、最後の部屋ではこの梁が作品と見る者を区切る柵の役割をし、危ういくらいのバランスで KIKOF の陶製品が置かれ緊張を感じさせる。

一番最初のスペースから奥へ向かうほど、作家性、表現性が高くなるという仕組みだ。展示を見終えて、逆走すると、奥の部屋にあった作家性の根幹から徐々に、デザイン=複製、量産品としての一般性を増していく。

ふと見ると、最初の「AUDREY(オードリー)」のスペースの床に苺が置かれていた。
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入った時はストレートに製品が並んでいる堂々とした展示という印象だったのが、このほんの少しのアクセントによって、これは製品のショウルームではなく、やはり渡邉良重の世界を表現する展示だったのだ、と気付く。

展示、2つ目。
OUR FAVOURITE SHOP の OFS gallery で行われている「渡邉良重原画展」では絵本や D-BROS の製品で使われたイラストの原画を展示している
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今考えるときちんと原画と製品になったものを個々に写真を撮りメモしておけばよかったと思うのだが展示会場となっている OUR FAVOURITE SHOP の雰囲気もあってかその絵一つ一つに集中するというよりはただ絵を見ているのが楽しいとふわーっと見続けてしまった
ライターの仕事として見るよりは、渡邉良重の絵の世界に入っていきたい気持ちが勝ってしまったのかもしれない。それだけ強く、深い力のある作品が揃う。

驚いたのは、同時に展示されていた製品化された絵本やガラス製品と原画のテクスチャーがほとんど変わらないことだった。薄い紙にエンボス加工されたり、紙媒体からガラスへと素材を変えたりしても、手描き独自のタッチが残っている。
D-BROS などの製品は作る度印刷所や加工所を回って何度も試作を重ねてやっとできたという制作背景がある過去取材で何度か話を聞いてきた事だったが緻密で繊細な絵をよくここまで再現できたものだと改めて感じてしまった

G8でも OFS gallery でも 来場者の多くが若い女性で「かわいい」と表現していた。D-BROS の製品や絵本などで使われるイラストレーションの作品は、かわいらしさと同時に、その製品加工技術であったり、物語性を増す緻密さであったり、背景込みで評価されていたように思う。
取材で話を聞いたことやイラストレーション独自の世界感もあって、渡邉良重の世界をただ単純に「かわいい」で済ませたくないという思いは今でもある。

だが「AUDREY(オードリー)」のパッケージでは少し違う印象を受ける。渡邉良重のイラストが持つ、物語を深読みしたくなる緻密な線や水彩の色むらから来る手の感覚は、太い線や色ベタ面に変わり、個性(いわば、渡邉良重性)を抑え、より多くの量産に向くグラフィカルな表現となっている。

「AUDREY(オードリー)」は現在タカシマヤ2店舗で展開されている、一般向けの洋菓子ブランドだ。人に見せたくなるパッケージに包まれた甘いお菓子を買う場所であり、デパート販売なりの量産性、一般性が求められている。ここでは渡邉良重や KIGI というデザイナーの作品を買うのではない。

手描きの繊細な作品も一般的なパッケージも、その場その場に応じて消費者に向くグラフィックを作れるのは、ドラフト在籍時代も含め約30年もの間、マス向けの広告から、消費者を絞った商品のパッケージまで、多様な媒体、商品を手がけてきた経験がなせることだろう。

デザイナーが絵画やイラストレーションの表現をし、発表することはよくあるが、概ねデザインとは切り離された世界感を求めて制作することが多いように思う。その中で渡邉良重はデザインとも切り離さず、どちらの領域も自由自在に行き来できる、希有な存在である。
銀座で見たせいなのか、かつて資生堂で活躍した山名文夫を思い出した。

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by dezagen | 2017-05-02 03:04 | 展覧会