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カテゴリ:本( 115 )
ドイツの出版社「Lubok Verlag」の本
編集宮後です。
このブログで本のことを書いていたら、素敵な本の情報をいただいたので、代官山 蔦屋書店で現物を見てきました。

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それがこちら。2号館1階のアートブックコーナーで、ドイツ・ライプチヒにある出版社「Lubok Verlag」の本が販売されています。

『Lubok』というタイトルのこのシリーズは、ルボーク社のクリストフ・ルックヘーベル氏が選んだアーティストの作品をオムニバス形式で収録した作品集。同社のトーマス・ジーモン氏が1958年製のプレジデント・シンドラー・レタープレスという印刷機で自ら印刷しているそうです。すべての作品は、リノリウムと呼ばれる合成樹脂を版にした印刷技法(リノカット)で丁寧に印刷され、とても迫力のある刷り上がりになっています(シリーズによって、モノクロ作品を収録した号とカラー作品の号があります)。本を開くと、インキのにおいが漂ってきて、印刷物好きにはたまらない一品です。

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中ページの作品写真。二つ折りのシートがたばねられています。製本されて本の形にはなっていますが、造本がすごいので、アート作品を買う感覚に近いかもしれません。

現在、最新号のno.11まで発行されており、バックナンバーも展示・販売されています。こちらのフェアは11月15日まで代官山 蔦屋書店にて開催。売り切れないうちに、お早めに。
http://tsite.jp/daikanyama/event/004393.html
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by dezagen | 2014-10-20 07:03 | | Comments(0)
SteidlとMack、そして珍造本
編集宮後です。
しばらく前に書いていてアップし忘れていた記事など。

映画「世界一美しい本をつくる男〜シュタイデルとの旅」で、日本でも話題になったドイツの出版社シュタイデル(Steidl)。
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http://www.steidl.de

世界の有名写真家やアーティストの作品集を刊行、デザインから印刷製本まで自社で行い、徹底的にこだわった本づくりで知られる出版社で、映画でもそのこだわりぶりが紹介されています。

日本でもシュタイデルの本が入手できるようになったので、ご覧になった方は多いかもしれないですね。

そのシュタイデルに20年間勤め、写真部門のディレクターだったマイケル・マック氏が2010年にイギリスで立ち上げた出版社「MACK」がこちら。
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http://www.mackbooks.co.uk

写真の美しさはもちろん「それ、出版する?」という珍本が多く、アグレッシブでクールな出版社。アート業界内での評価も高く、刊行と同時に初版が売り切れるタイトルもあるそう。

そんなMACKの本を紹介するトークイベントがあったので聞いてきました。本を見ているだけだとわかりづらいのですが、アートブックや写真集の目利きの方々の解説を聞いて初めて面白さに気づくものもありました。

私がすごいなと思ったのはこちら。Oliver Chanarin & Adam Broomberg の
『Holy Bible』。
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http://www.mackbooks.co.uk/books/68-Holy-Bible.html

中味は普通の聖書なんですが、キリストの奇跡のエピソードが書かれている箇所に、それを揶揄するようなスキャンダラスな写真が掲載されいてるという問題作です。たとえば、空中浮遊のエピソードのところに、人体が空中に浮く手品の写真が挿入されているなど、ちゃかしちゃってるわけです。見た目はおしゃれですが、宗教上のタブーにふれた過激なアートブックといっていい仕上がりになっています。

1冊60ユーロもするし、完全に珍本の類いだと思うんですけど、何回も重版してるそう。日本では理解されづらいと思いますが、世界で出版するなら成り立つのかもしれません。

海外のアートブックは、中味は超珍本なのに造本が美しかったりして、見ていて本当に楽しいです。ジャンル的には珍本+造本で、「珍造本」ですかね。今年も11月末から「世界のブックデザイン」展が開催されるそう。世界の珍造本を見るのが楽しみです。
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by dezagen | 2014-10-07 02:24 | | Comments(0)
海外との版権売買
編集宮後です。
デザイン書を編集していると自分が担当した本の海外版が出版されたり、反対に洋書を翻訳して出版したり、一冊の本が各国でローカライズされる状況を身をもって体験することになります。特にデザインやタイポグラフィの本は世界でコンテンツを共有しやすいため、そうした機会も多いのです。

今年5月に『欧文書体』の中国簡体字版が出て、いま別のデザイン書2冊の台湾版が進んでいます。自分が担当した本が海外の編集者の手によってどんな本になるのか、ブックデザインや文字組がどのように変わるのか、国ごとのローカライズの様子がとても楽しみなのです。実際に海外の編集者と会ってやりとりすることはないのですが、そこは編集者同士、言葉や文化が違っても通じあえるところが多く、いい刺激になります。

自分が「いいな」と思う感覚が、日本では理解されなくても、海を越えた国の編集者にはすっと伝わることも多く、最近特にそういう体験が増えてきました。1冊の本を通じて、言葉も文化も違う人たちと、感覚的にわかりあえるってすごいことだと思います。翻訳された言葉の意味はわからないけど、造本の雰囲気から丁寧につくられた本なのかどうかはだいたいわかります。単なる翻訳ではなく、原書を超えようとがんばっている造本を見ると、ぐっときますね。

もうすぐできる(らしい)台湾版が楽しみです。
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by dezagen | 2014-08-06 01:23 | | Comments(0)
世界の素敵出版社3
編集宮後です。
昨日、竹尾賞の授賞式に行ってきました。

竹尾賞とは、優れた印刷、デザイン、内容の書籍や図録に贈られる賞で、今年は書籍3点、デザイン論文1点が選ばれました。ノミネートも含めた選出書籍の展示が7月18日まで、神保町の竹尾見本帖本店で開催されています。
https://www.takeo.co.jp/exhibition/mihoncho/detail/20140625_takeosho.html

受賞作、ノミネート作を見ていて思ったのは、新潮社さんの本を除いて、書店で普通に入手できる書籍が少ないということ。ネット書店で検索したりすれば買えるけれど、書店で平積みになっているような本がほとんどノミネートされていない。そうした本が審査にのぼらなかったのか、審査されて落ちてしまったのかはわからないけれど、ちょっとさみしいなと思ったのでした。実際の出版の現場を知ると、それがむずかしいということはわかっているのですが。

そんな環境でも、丁寧にすばらしい本をつくっている出版社があるというのは救いになります。このブログでも海外の出版社を紹介してきましたが、日本やアジアにもそうした出版社が多々あります。

今回、竹尾賞を受賞した烏有書林をはじめ、『せんはうたう』などを出版している、ゆめある舎、アート・デザイン・建築の良書を出し続けているADPなど。

ほか、美しい手作りの絵本で知られるインドのタラブックス、台湾の漢聲

先日、学生さんにいろいろなビジュアルブックを見せる機会があったのですが、漢聲は大人気でした。毎年刊行されている干支のポスターのほか、台湾に伝わる紐の飾り結びを紹介した本『手打中國結』や切り絵作家、庫淑蘭の作品集『剪花娘子庫淑蘭』など、美しい本がたくさんあります(『手打中國結』は長らく品切れでしたが、復刊されたみたいです)。
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http://www.hanshenggifts.com/front/bin/ptlist.phtml?Category=100031

ウェブサイトで本を知ってもらうことはできるけれど、やはりこういう種類の本は現物を触って見てほしい。美しいビジュアルブックを集めたフェアがどこか書店の中でできたらいいなあと思っています。
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by dezagen | 2014-06-25 13:55 | | Comments(0)
ロゴの本をつくっています
編集宮後です。
amazonにアップされたので情報解禁なんですけど、いまロゴの本をつくっております。

オランダの出版社BIS Publishersから2012年に刊行された『Logo Life - Life Histories of 100 Famous Logos』という本の日本語版です。タイトルは『ロゴ・ライフ 有名ロゴ100の変遷』。

世界の有名企業100社の創業から現在までのロゴの変遷をまとめた本。現役アートディレクターである著者がロゴの歴史を全部調べ上げて書いているんですね。

われわれも「これ誰」でずっとロゴを調べてきたわけですが、変遷までは追いきれていない部分もあり、本当にこの著者の方はよく調べたなと思います。

日本でもロゴの本は多々ありますが、ちゃんと変遷まで調べている本となると、太田徹也さんの本『CI=マーク・ロゴの変遷―デザインで追う企業イメージの移り変わり』くらいでしょうか。

で、肝心の内容のほうですが、こんな感じ。
(BIS Publishersのサイトから画像をお借りしました。courtesy of BIS Publishers)
http://www.bispublishers.nl/bookpage.php?id=207
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各企業がABC順に紹介されていて、ロゴの変遷が図版で示されています。担当デザイナー名がわかるものは書いてありました。

スターバックス、アップル、ナイキなど、昔は企業名が文字で入っていたのにブランドが有名になってくると文字がなくなるとか、BMW、Ford、ベンツなどは創業からほとんどロゴが変わってないとか、読み進めるうちにいろいろな事実が判明してきてけっこう楽しい。

31アイスクリームのBRのロゴの中に「31」の文字が隠されているとか、FedExの「Ex」の間に→が潜んでいるとか(これは有名ですね)、チュッパチャプスのロゴは画家のダリがデザインしたとか、思わず話したくなるトリビア的な知識も。

ざーっと変遷を見ていくと、1980-90年代に流行った太くてかっちりしたロゴタイプから、最近は細くて丸みを帯びた柔らかい感じにリニューアルされる傾向があるように感じました。綿密なデータの追跡によって、ある傾向が浮かび上がるのは調査の醍醐味でもあります。

デザイナーだけでなく、企業経営やブランディングに携わっている方にぜひ読んでいただきたい。7月頭には書店に並ぶ予定なので、よろしくお願いします。

『ロゴ・ライフ 有名ロゴ100の変遷』
A5判、312頁、定価2500円+税、7月上旬発売
http://www.amazon.co.jp/ロゴライフ-有名ロゴ100の変遷-ロン・ファン・デル・フルーフト/dp/476612622X/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1403055877&sr=1-1&keywords=ロゴ%E3%80%80ライフ
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by dezagen | 2014-06-09 21:11 | | Comments(3)
最近の雑誌について思うこと
編集宮後です。
編集者にとって、ゴールデンウィークは楽しみというより印刷所が止まってしまうという恐怖週間でしかありません。かくいう私もGW前に駆け込みで校正を戻したばかりです。

さてさて、この時期多い話題は、雑誌のリニューアル。特に、雑誌の小型化と制作スタッフ総入れ替え的なリニューアルが最近目立つ傾向でしょうか。

雑誌の小型化は、少し前から女性誌で始まりました。A4変型という従来の女性誌のサイズだと、大きすぎてバッグに入らないということで、同じ内容を小型化したミニ版が従来サイズと同時に流通するように。「どちらか読者が好きなほうを選んで買ってね」という戦略です。

出版社側の都合でいえば、小型化することで紙代も減らせるし、同じコンテンツを流用できるし、そのまま電子書籍にも展開できていいことづくめのようですが、はたして大小2サイズを同時刊行するほど読者ニーズはあるんでしょうか。読者が小さいほうを求めるのであれば、従来のサイズを廃止して、ミニ版だけでいいのでは?と思ってしまいます。

と思っていたら、男性誌の『HUgE』が判型自体を見直してミニサイズになってました(22.6 x 17.8cm)。アートディレクションはタイクーングラフィックスが担当。HUgEなのにミニサイズていいんだろうかという疑問はさておき。

小型化といえば、最近創刊された『Mart』の別冊雑誌『Sprout』。こちらも22.6 x 17.8 cm。iPad対応なのでしょうか?A5とB5の中間だから、紙の取り都合的には微妙なんですけれど、写真もそこそこ大きく載せられるし、誌面作りをしやすいサイズなのではないかと思います。

もう一つの特徴が編集長&ADごと入れ替える雑誌リニューアル。『芸術新潮』『anan』などが入れ替わりましたね。芸新は5月号からロゴも変わりましたよ。
http://archive.today/rT7Ea

今雑誌を創刊しようとしたら、今までにないジャンルのもので、編集長が1人でつくるのが面白いんじゃないかと思います。東京23区を1区ずつ特集していく雑誌『TO mag』や新しい文藝雑誌『mille』もそうですね。どちらも書籍コードで刊行されています。

実際に書籍1冊分の予算で本当に雑誌ができたので、まったく問題ないですよ。会社で雑誌コードを持っていなくても広告を入れずに書籍コードのまま定期刊行すればいいので。
(雑誌コードとは取次に定期刊行化を認められた媒体のみにつけられるコード。定期刊行しないものは、通常、ISBNから始まる書籍コードで刊行される)

つまらない本をつくるくらいなら、センスがよくて、やる気と体力がある若者にポンとお金渡して好きにつくってもらったほうが結果的に面白くて売れるものがつくれると思うんですけどね。荒削りでもいいので、そういう雑誌をもっと見てみたいです。
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by dezagen | 2014-05-03 23:57 | | Comments(0)
若手デザイナー紹介本ができました
編集宮後です。

昨年11月のブログのエントリー「新しいプロジェクトを始めます」で少し書いた、若手デザイナー紹介本ができました。デザイナー取材歴10年以上のエディター、ライター5人(渡部さんと私も参加)で50組の若手デザイナー(おもに平面系)を選出。それぞれの仕事と人を紹介させていただきました。

デザイン賞を受賞されたり、雑誌などで特集されたりしている方ではなく、これから活躍が期待されそうな方を中心にご紹介させていただいたので、「なんでこの人が入ってないの?」的疑問は多々あると思います。実際このあたりのさじ加減が非常に難しかったのですが、結果、かなりフレッシュな仕上がりになっております。

私は10組の取材に行ってきたんですが、その方の経歴やお仕事について直接話をうかがうよい機会になりました。印刷や文字組のテクニックを聞くのもおもしろいのですが、人となりについて聞くのが一番おもしろいです。

4月8日ごろから書店に並び始めると思うので、ぜひご覧ください。
『Designers' Works 01 新鋭デザイナー50組の仕事』
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by dezagen | 2014-03-27 20:35 | | Comments(0)
『デザインの現場』のこと(3)
編集宮後です。
経営陣同席の編集会議後、どうなったかの続きです。

最初は誌面のリニューアル会議ということで、どうすればよりよくなるかを考えるための会議だったらしいのですが、途中からおかしな感じになっていったようでした。

私はすでに雑誌編集部から離れていたので、毎月行われていたその会議には同席していませんでしたが、一度だけ同席するように言われたことがあります。

そのときはすでに紙媒体からウェブ媒体へ移行するという案が出ていて、残り3号のうちに完売しなかったら休刊、という話になっていました。ちなみに10年間で完売したのは1度だけなので、過去のデータから考えると完売する確率は1/60です。

ウェブを立ち上げつつ、紙媒体の刊行回数を減らして(たとえば隔月刊から年3〜4回刊行とか)続ける方法を提案しましたが、だめでした。

その後、2009年6、8、10月号と3号刊行されましたが、完売できず、2009年年内に休刊が決まりました。

休刊が決まったあとは、定期購読者に残額を返金し、取次に雑誌コードを返して手続きが終了。創刊するのはすごく大変ですが、休刊ってあっけないんだなと思いました。2010年4月号、170号で終わったことになります。

最後まで黒字だったので、なぜやめなければならなかったのかはよくわかりません。なのでいまだに自分の中では消化できず、それ以降、雑誌をビジネスとして成立させるにはどうしたらよいのか、社会にどんな影響を与えるのかを考えるようになりました。

そのことを実際の仕事で検証したいと思い、2012年には別の場所で新しい媒体を立ち上げました。2013年末までに4号刊行され、おかげさまで利益を出しながら続けていくことができそうです。Facebookと連動することで、海外からもたくさんのお問い合わせをいただいています。先日もアメリカの写真家から売り込みがあり、一緒に仕事をしました。将来的には英語版や中国語版も出せるといいなと思っています。雑誌制作の仕方も日々刻々と変わってきています。

今年の記事投稿はこれで終わりです。最後もやはり雑誌制作のことを書きました。来年も本を軸としてデザインを見る活動が続くと思います。皆様、よいお年をお迎えください〜。
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by dezagen | 2013-12-31 16:44 | | Comments(0)
『デザインの現場』のこと(2)
編集宮後です。
「デザインの現場の現場」の続編です。

1998〜2010年までほぼどっぷりとデザイン取材生活を送ることになるわけですが、2000年代の社会の動きと雑誌の内容を振り返ってみると非常におもしろいことに気がつきます。

2000年は佐藤可士和さんをはじめとしてすでに実績のある有名アートディレクターが相次いで広告代理店から独立した年。広告営業機能を持たずに制作に特化するクリエイティブエージェンシーもできたりしてデザインシーンが盛り上がっていた頃。大規模な広告キャンペーンも多く、デザイン年鑑を賑わせていました。

そのころ編集部では、頼りになる先輩編集者たちが相次いで退社し、同年代の同僚編集者と2人でがんばらざると得ない状況になっていました。あまりに長い時間、一緒に会社に居すぎて、お互い話す内容や着ている服がシンクロするという不思議な現象も体験しました。幸いデザインシーンが非常に刺激的な時代でもあったので、貴重な取材体験を数多く積めたのもこのころです。

在職期間中、実売部数がいちばん多かったのも2000年代前半です。時代の勢いと編集部の情熱、読者の関心がいい感じで高まっていたころだと思います。

2004年にデザイン携帯が数多く発売され、「デザイナーズなんとか」が一般にも浸透してくると、
新しい局面を迎えます。

それまで一部のものだったデザインが大衆化されることにより、一般誌でもデザインが扱われるようになったのが2004〜2007年ごろです。デザイン雑誌もいくつか創刊されました。

対象となる読者が増える分、部数も増えるかというとそううまくはいかず、かえって読者が分散してしまい、思うように部数が伸びなかったのもこのころです。すでにデザインブームは去っていたのです。

そして2008年以降。
リーマンショック後、経済の落ち込みと同時にデザインの仕事自体がだんだん減ってきて、広告の大規模キャンペーンも極端に減りました。そうすると取材対象自体が減ってくるので、必然的に記事も小粒になってきます。

私は2007年に体調を崩して編集部から離れ、連載だけ担当していたので詳しくはわからないのですが、特集企画を考えるのも大変だったと思います。

そんななか2008年に企画された「世界を救うためにデザインができること。」はいい企画でした。NY MoMAで開催された展覧会「Design for the other 90%」(世界中の90%をしめる発展途上国の人々のためのデザインを集めた展覧会。泥水を飲料水に変えるストローや、転がして大容量の水を運ぶ容器などを展示)のほか、トリアージタグや担架、ヘルメットなど災害時に必要なデザインなど、社会的意義の大きいデザインを紹介した特集でした。大災害を経てソーシャルデザインが注目されている今ならその重要性にすぐ気づけますが、当時は特集するのが早すぎたのかもしれません。

そして2009年。経営陣が同席する編集会議が頻繁に開かれるようになり、事態が急展開していくことになるのです(続く)。
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by dezagen | 2013-12-26 07:05 | | Comments(0)
『デザインの現場』のこと(1)
編集宮後です。
最近、『デザインの現場』のことについてよく聞かれます。
公式ページがすでに残ってないことに加え、休刊した理由がよくわからないからかもしれません。

『デザインの現場』(以下、デザ現)は、月刊『美術手帖(BT)』の別冊として『デザインの現場から』という雑誌名で刊行されました。BTと同じA5サイズです。その形態で3号出たあと、1984年1月号から『デザインの現場』に名称変更され、B5判の隔月刊定期刊行誌となります。

創刊1〜5号目までの特集記事を見ていくと、
「GK設計」(1984年1月号)
「資生堂」(1984年3月号)
「ミュージカルキャッツのデザイン」(1984年5月号)
「トミー(注:玩具製造会社のほうです)」(1984年7月号)
「ダイハツ」(1984年9月号)
「松下電工」(1984年11月号)
と企業関係の取材が並んでいます。

たとえば、資生堂の取材では社内デザイン部(宣伝制作室といいます)の仕事場の写真が掲載されているなど、まさにデザインが生まれる現場とそれにたずさわる人を取材していたようです。

創刊編集長に当時の編集方針を聞いたところ、とにかく写真でリアルに現場を伝えることを主軸に
徹底的に現場取材をしていたそうです。まだ職場にコンピュータがない時代なので、仕事場にはいろいろな道具や模型もたくさんあって写真映えすることも幸いしたと思います。
(今だとパソコンが目立ってしまってどの職場も似てしまうのではないかと思います)

1985年からは、木やガラスなどの工芸、コンピュータ、イラストなど、より多彩な特集が組まれるようになります。それ以降も編集長が変わるたびに、内容が変化していき、90年代半ばにリニューアル。90年代後半には再びがらっと内容が変わり、印刷や文字などのテーマが本格的に取り上げられるようになっていきます。私が参加したのはこのころです。
(ちなみに雑誌デザインは、1984年創刊〜1995年まで中垣デザイン事務所、95〜96年あたりが坂哲二さん、96〜2010年休刊までをマツダオフィスが担当しました)

内容が変わっても、創刊当時から貫かれている基本コンセプト「あらゆるジャンルのデザインを取材して紹介する」という指針は変わりません。グラフィック、プロダクト、インテリア、建築、ファッション、写真など、取材対象は多岐にわたりました。

創刊当時の号を見ていて、こんな文章を目にしました。
「モダンデザインから伝統工芸まで、個人のイラスト・絵本からメーカーの機械製品、建築やファッション、舞台デザインまで、わたくしたちの生活にかかわるあらゆる分野を多岐にわたって紹介」。

先輩から面と向かって教えられたことはないですが、無意識のうちにコンセプトを共有していたように思います。誌面は変わっていっても、はずせないコンセプトだけは編集部という場を通じてしっかりと共有されていくのでしょう。

2000年からは文字や印刷などグラフィックデザイン周辺の実用的な情報中心に、読者に役立つ誌面づくりを目指しました。タイポグラフィ、印刷、造本、独立などのテーマは特に人気があり、よく売れましたが、当時から10年以上経ち、社会が変わっている現在も同じようなテーマの特集が繰り返されているのは不思議な気もします。

私たちも最後のほうはそうした特集をリピートをしてましたが、それだけが原因ではない気がします。2000年代のデザイン業界を振り返りつつ次に休刊までのあしどりを追ってみます。[続く]
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by dezagen | 2013-12-23 22:37 | | Comments(0)