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サインデザインの名著『WAYSHOWING>WAYFINDING』
編集宮後です。
以前、「これ誰」の取材で大変お世話になった
アイデザインの児山啓一さん。中部国際空港 セントレアや
JR東海のサイン計画などを手がけられたサインデザインの第一人者。
取材時にも我々が迷ったりしないよう、
きめ細かい配慮をしていただき、いつも感謝感激なのであります。

さて、その児山さんから「こんな本が出ましたよ」と教えていただいた
サインデザインの本が『WAYSHOWING>WAYFINDING』です。
オランダのBIS Publisherから来年1月に刊行される予定だとか。
本の画像はこちらをご参照ください。

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「これ誰ブログでご紹介せねば」と思っていたら
児山さんから原稿をいただいたので、そのまま掲載させていただきます。

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WAYSHOWING>WAYFINDINGは、デンマークとメルボルンを居住地とするインフォメーションデザイナーPer Mollerupによる待望の新刊で、2005年に発行されたWayshowingの再発行を期待する巷の声に応えるべく、デジタルサイネージの観点や、最新の事例を書き加えた改修増補版だ。

読者は、まず最初に目にするJRの自動券売機の写真に驚くだろう。間違って切符を購入した場合や券売機に異常があった場合に扉が開いて駅員さんが対応してくれる、日本ではお馴染みの情景だが、彼はこれを「究極のヘルプデスク?」と絶賛している。世界に誇る最先端のテクノロジーを持ちながらも、同時にこのような細やかな配慮が可能な日本のマン・マシーン・インターフェイスのあり方に感動してくれたのだ。

前半の原則編(Principles)では、このように一見何気ない写真を紹介しながら、その裏に隠された「情報」とそのあるべき形を、彼独特の切り口で優しく説明してくれる。解き明かされてみれば、なるほどなあ、と思わず膝を打つような事例ばかりだ。本文の脇には、彼お気に入りの丸メガネが目印のコメントが付いていて、ぴりりとここちよい刺激を味わうことができる。

そして後半の実践編(Practices)では、その彼のメガネに叶った空港や駅など公共空間の最新事例25件が紹介され、ここからも、インフォメーションデザインのあり方を学ぶことができる。また章の仕切りには彼のデザイン哲学が簡潔な英語で要約され、読めば読むほどじわっと味がでる。

Wayshowingとは、建物内外のいわゆるサインシステムを計画する専門的な行為のことで、Wayfindingが未知の場所で行き先を探すことの意味に対して、ちょうど、読むことと書くことの対比に相当する。その意味で、この本は全てのデザイナー、プランナーに対してまさに絶好の教科書であり、今までサインの用語を何となく使ってきた人、これから「サインとは何か?」を真剣に学びたい人に是非お薦めしたい一冊だ。

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なんと、いま渡部さんと取材している案件についても
児山さんが仲介してくださり、充実した取材ができそうです。

サインデザインは「相手が迷わないか」を常に意識しないといけない
デザインだからこそ、このような気遣いが自然にできるのでしょうか。
今回もまたまた感謝感激なのでした。
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by dezagen | 2013-11-26 18:51 | | Comments(0)
美術展図録制作(続編)
編集宮後です。
2年前に書いた記事「美術展図録制作」
http://dezagen.exblog.jp/16795847/
のアクセスが急に増えていました。

アクセスが多くなった理由として、
「美術展のポスターはすてきなのに
図録ががっかりなことがあるのはなぜなのか?」という疑問を
もたれている方が多かったからではないかと思っています。

その後、図録をとりまく状況も変化してきているので
簡単に追記します。

美術館が入札で制作会社に図録制作を発注をする場合、
基本的には入札金額が安いところに発注されます。
そのため、ここ最近では非常に安い金額で
入札をしてくる会社もあると聞きました。

それにあわせて他社も価格を下げてしまうと
業界全体が低価格競争になってしまい、
品質面で妥協せざるをえない結果になりがちです。

そうならないために、がんばっている会社もあるので、
きちんとつくられている図録がちゃんと売れて、
評価されるようなサイクルになるといいなと思っています。

限られた予算の中で、いいものをつくろうとする姿勢は
図録からも自然と伝わってくるものです。
造本設計、印刷製版、本文組版など
細かい部分にそれが出てくるからです。

私の場合は、制作会社名、デザイナー名などを参考にして
いいなと思った図録を買うようにしています。

基本的に品切れでも重版されないので、
欲しいと思った図録は即買いが基本。
バーネット・ニューマンの図録を買いそびれてしまったのが
いまだに心残りです(泣)。
http://blog.excite.co.jp/dezagen/17928429/
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by dezagen | 2013-11-25 00:10 | その他 | Comments(0)
ライオン Mrトップ Mrs ソフラン
ライター渡部のほうです。

2ヶ月ほど前に、ライオンからこんなものもでているのだ、と書いた、
http://blog.excite.co.jp/dezagen/20957212
Mrトップ、Mrsソフランなどのキャラクター型ボトルの洗剤シリーズ。

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左:衣料用洗剤Mr トップ。右:衣料用柔軟剤Mrs ソフラン 2010年発売。

ノベルティとギフト用に販売されているもので、ライオンのオンラインショップで購入できる。
www.lionshop.jp/life/animal/

他のライオン製品と毛色が随分違うので、「これ、誰がデザインしたの?」とライオンに聞いてみたところ、Mr トップ、Mrs ソフラン、ルックダック、チャーミーベアとチャーミーホワイトベア、およびスポンジも、「ライオン社内のデザイナーによるもの」なのだという。

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台所用洗剤チャーミーベアとクリームクレンザーチャーミーホワイトベアのセット。スポンジ付。 2008年発売。

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お風呂用洗剤ルックダック。2010年発売。

ライオンが普段作っている洗剤ボトルの形状と立体キャラクターボトルとでは、凹凸の具合も違うし、使い勝手だけでもかわいくならないし、かわいさ優先で作っても使い勝手が悪くなるだろうし、かなりタイプの違う立体。やはりそこは苦労したようで、
「弊社では過去、キャラクターの形のボトルを作ったことがありませんでしたので、どうデザインすればよいか?そのデザインを設計部門にどう伝えればイメージどおりに立体化してもらえるか?試行錯誤だったことです。はじめのチャーミーベアの時は明らかに違う顔の立体モデルが何体も出来上がってきてその修正に大変苦労しました」
とのこと。

「明らかに違う顔の立体モデル」…。

自分の経験と重ねては、プロの方に失礼だと思うが、初めて石膏デッサンをしたとき、目の前のものとは全く違うダヴィデ像(の頭)になっていったことを思い出した。
目には見え、頭の中にはイメージが焼き付いているというのに、他のものでそのイメージを伝えることは本当に難しい。

コツを掴んでしまえばそんなに難しいことではないのだが、それを掴むまでは自分で試行錯誤するしかない(私の場合は全然デッサンが上手くならなかったけど)。
その後Mr トップ、Mrs ソフラン、ルックダックとキャラクター型が製品化されたところを見ると、ライオンのデザイナーも設計部門の人々も、がっちりコツを掴んだのだろう。

使いやすさの配慮として
「チャーミーベアとルックダックについてはボトルを押さないと液体が出ませんので、キャラクターのお腹の押し具合に留意してあります」
実際に使って見ると、動物のお腹を押す、というちょっとした面白さがある。
他の顔とか足とかではなく、押す場所であるお腹に指が来るような形状になっている。

このキャラクターシリーズの中では、特にルックダックがいい。
お腹を押すと頭からぴゅー。上の蓋に小さい穴が4つ空いているので、頭から4本の毛が出て来るように洗剤が出て来るのだ。
ついつい遊んでしまいそうだが、あくまで洗剤なので遊ばないように気をつけなければ。



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by dezagen | 2013-11-19 18:00 | プロダクト・パッケージ
韓国ブランド
ライター渡部のほうです。

最近読んだ本。

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『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』
ゲイリー・シュタインガート著/近藤隆文訳 NHK出版刊
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00056382013
(画像がやけにデカいですが、ホント面白かったよ、の現れです)

経済破綻と軍事化が進み、人間の社会性やら性的魅力やらもろもろも全部データ化されて、手元のデバイスですぐ分かっちゃうような、なんだかやりきれないねえ、という近未来(あるいはパラレルワールドの)米国が舞台。
ロシア系アメリカ人、39才、ヲタっぽくってキモいレニーと、韓国系アメリカ人、24才、家族関係とキリスト教的罪と罰の意識と買い物欲に挟まれまくりの美人ユーニス、のやりとりで話が進んでいく。
とてつもなく、今(とちょっと先)のアメリカ社会を映し出すお話。

あらすじはamazonのほうが詳しいので、そちらをご参照下さい。
http://www.amazon.co.jp/dp/414005638X/ref=cm_sw_r_tw_dp_djBGsb1FNG5MN

人によって見方はそれぞれ違うようだけれど、私はレニーにはもったいない、全然バランス取れてない、美人のユーニスが韓国人、というところが気になった。

冴えない白人男性がアジア系女性に惹かれる、というのよくある話。
特に韓国系アメリカ人の多い米国では、スレンダーでヘルシーでキレイで(人に依るが)、男性に従順(幻想)な韓国人女性の人気は高い。
と、思っていたところで、こんな映像を見る。


Girls' Generation 소녀시대_'I GOT A BOY'_Awarding YTMA 2013 'Video of the Year'

ファンの投票により受賞者を決める、Youtube Music AwardのVideo of the Yearに少女時代の『I GOT A BOY』が選ばれた受賞の様子。

プレゼンターを務めた2人のコメディアン(小さいほうがジェイソン・シュワーツマン、もじゃもじゃな方がレジー・ワッツ)と、トロフィーを受け取りに来た少女時代のティファニーが並ぶ様子は、『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』のレニー(もしくは作者のシュタインガート)の夢を膨らませるにふさわしい図である。

いわゆる二枚目タイプハンサムではない2人とドレス姿の美少女。
コメントもウイットや皮肉の効いたものではなく、直球な素直さ。
流暢な英語(ティファニーはサンフランシスコ生まれの韓国系アメリカ人)と韓国語で
「本当に素敵。Youtubeは私のベストフレンド!最初のYoutube Music Awardに参加できるだけでもすごいのに、受賞できるなんて、全然想像してなかったの。もうすっごいエキサイティング。でもなんか私達にはもったいないような気もしちゃう。みんなありがとう。みんなのこと、愛してる。」

Youtube Music Awardは特に立派なコンサートホールでもなければ、正装でもなく、えらいカジュアルなセレモニー。
そんな中で、ぽんっと現れた、美しく、謙虚な、清楚ないでたちの韓国人女性。
これはハートを射貫かれても仕方ない。

韓国美人の話はこの辺でストップすることとして。
「少女時代がYoutube Music Awardを受賞した」ということについて、韓国のメディアは
「米国CNNは「少女時代、マイリー・サイラス、レディー・ガガを抜く」という記事を掲載。 米国最大日刊紙USAトゥデイは「少女時代が授賞式でレディー・ガガや別の候補者を抜いて受賞したというのは、明らかに若い歌手たちにとって衝撃だった」と評価した」
「世界的なオンラインプラットフォームで韓国アーティストが世界の人気スターたちと競争し成し遂げた最初の記録であり、韓国の音楽と歌手が世界中の音楽をリードすることを証明した」
などとかなり強気で伝えている。日本のメディアも概ね似たような内容だ。

とはいえ、Youtubeで投票を募り最高賞を受賞することと、世界の音楽界をリードすること、は意味が違う。
投票数を水増し工作したという話もあるようだが、その真偽はさておいても、Youtubeでの韓国アイドルの人気は世界レベルで見ても高い。熱狂的なファンが多く投票したことには間違いないだろう。
だが、それはこれまで「世界的スター」と言われてきた、マイケル・ジャクソンやマドンナや、もう少し遡ってビートルズやプレスリー、といったスターとは違う。
Youtubeという個人とモニターの間だけで展開される世界だけで、お金を払わずとも楽しめる世界のみで、少女時代は評価されたのである。

韓国メディアももちろんこうした背景は分かっているはずだが、その上で、あえて強気な発言を繰り返す。「韓国が世界に評価された」と。

韓国の音楽業界は、世界に認められるために努力を続けてきた。
無料で見れるYoutubeにビデオを流し、ファンが撮影した映像、DVDの映像、テレビで放映されたもの、CDなどから取った音源をファンがアップしても、ほとんどの場合許容してきた。
当然コピーされ、CDや正式な配信での収益は減るが、PR効果は高い。
ファンは自分で字幕を付け(英語に加え中国語、ベトナム語などアジア圏の言語はもちろん、トルコ語、ロシア語、スペイン語、アラビア語とどこまでも広がっていく)、ファンがファンを呼ぶ。

海外公演の観客が韓国や近隣アジアからのファンや地元の韓国系の人々がほとんどだったとしても、「○○で公演を行い成功させた」と伝える。
国内外のライブでは観客の中の白人をカメラが捉え、プロダクションや音楽会社の公式ビデオとして流す。
白人=世界の中心、という意識もあるだろう(作っている側にあるかどうかは分からないが、視聴者である多くのアジア人の中でいまだ根強い感覚だと思う)。アジア人から最も遠い人種である白人まで行き渡ったという効果もあるだろう。

韓国の音楽業界がYoutubeを好んで使うのは、これまで収益の大きな源とされてきた音源(レコード、CD、配信)からの利益を上げることが目的ではなく、PRに力を入れることが目的であって、その最終的なゴールは「韓国が世界に評価された」となる。

この方法は音楽だけではなく、ドラマでも映画でも同じだ。
韓国ドラマや映画の人気はまだアジア圏にとどまっているようだが、それでも相当なキャパシティを抱えている。
ドラマや映画を「見る」、俳優、女優を「見る」、音楽を「見る」人々に芽生えるのは、「あのアイドルみたいになりたい」「あの女優さんみたいになりたい」「あのファッションが欲しい」「あのドラマで使われていたあれが欲しい」と、次の消費欲に繋がる。

やっとデザインの話になるのだが、先日から「日経デザイン」の連載『日本ブランドが世界を巡る』約5年を終えて感じたことをこのブログで綴っている。
気になったこととして「世界的に韓国のブランド感が高まっている」ことを挙げた。

東南アジアから中近東圏に旅行すると、空港で使われているモニターは概ねサムソンかLG。広告も大きい。
ヨーロッパのホテルでもサムソン、LGのテレビをよく見る。
サムソンのギャラクシーが世界的に普及している。
こうした韓国製品の台頭の背景には(政治的云々はさておき)、特にアジア圏では、例えば俳優やアイドルを起用したCMがあったり、ドラマで使われていたりというストーリーがあるのだ。
電化製品や車だけでない。ファッション、アクセサリーなどとどんどん幅が広がっている。

以前もこのブログに書いたような気がするのだけれど、マレーシアの知人に「日本(の製品)ってお高くとまってる感じがする」と言われ、ちょっとショックを受けたことがあるのだけれど、確かに「うちのは高品質でございます。ですのでお値段も高いのでございます」とのっけから言い放つ日本の製品にそう感じるのは無理もない。
ましてや、Youtubeから何からサービス満点な韓国、ヲタ中年を面倒見る若く美しいユーニス、美しく謙虚なティファニー、に比べたら。

韓国もここまで来るのに時間と労力を払っているはずだし、韓国の方法をそのまま真似しようと思ってもかなり無理があると思う。
が「韓国製品が売れてるのって、安いからでしょ」と思う人は、今から羽田か成田に行って東南アジアとヨーロッパ回ってくるか、そんな金も時間もないというのであれば、『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』の一読をお奨めいたします。
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by dezagen | 2013-11-12 22:16 | その他
新しいプロジェクトを始めます
ほぼ思いつきで新しいことを始めたがる編集宮後です。
そのうちいまも続いているのは、これ誰ブログ(2008年〜)、
TypeTalks(2010年〜)、Typography magazine(2012年〜)。
ほぼ2年周期です。ということは来年何かしないと...ということで
以前からずっと考えていたプロジェクトをゆるく始めます。

『デザインの現場』でずっと続いてきた若手デザイナー発掘特集を再開します。
とはいえ、デザ現なき今、発表媒体があるわけでもないので、
実力のある若手デザイナーを地道に探してきて
コツコツとリストアップしていこうと思っています。
いつかちゃんと発表できるように。

野球のスカウトが全国行脚して未来のスターを見つけてくるように
(なぜたとえが野球なのかはさておき)
編集者も未来の才能を見つけてくるのが仕事です。
「いいな」と思った人に仕事を任せて
それをきっかけにどんどん飛躍してほしいと思います。

以前、まだ無名だったころの野田凪さんを
『デザインの現場』で大きく紹介したことがありました。
(調べたら1999年の記事でした)
後日、野田さんに聞いた話によれば、
その記事を見た宇多田ヒカルさんが野田さんに
新しいCDのデザインを依頼してきたとのこと。
野田さんがすごく喜んで話してくれたのを覚えています。

(そういえば、このブログの元になった書籍
『これ、誰がデザインしたの?』を山野さんにお願いしたのも
偶然見つけた『銭湯読本』のデザインが気に入って
デザイナーを調べて会いに行ったのがきっかけ)

こういう出会いがもっと増えてほしい。
媒体をつくっていて一番やりがいを感じるのは
こういう瞬間かもしれません。

今後の具体的な方法はまだ模索中ですが、
興味があるという方、自分の仕事を見てほしいという方は
ブログのコメント欄宛にぜひご連絡だくさい。
自薦、他薦、いずれも大歓迎です!
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by dezagen | 2013-11-12 00:29 | デザイナー紹介 | Comments(0)
国くくりについて 先ほどの追記として
ライター渡部のほうです。

先ほど投稿した、日本ブランド〜に関する雑記で、「日本」「イギリス」「韓国」と国くくりにしたところに違和感を感じる人もいるかと思い、追記。

どんな人でも動物でも物でも、ひとたび海外に出てしまえば、どこから来たものか、を問われる。
例えば、私はライター/ジャーナリストであり、学校の教員であり、デザインが好きで、コーヒーが好きでたばこを吸う、人であるが、海外ではまずその前に「日本人」である。

クラシック音楽奏者であれ、コメディアンであれ、政治家であれ、工場労働者であれ、学生であれ、何も仕事をしていない状態であれ、○○人、という表現はどうしてもついて回る。
一番最初に分類しやすい国名のその国のイメージにより、スタートラインにある評価軸が上がったり下がったりはするだろう。
その際に付いた国名はその人自身そのものを評価するものではない。

「私の会社は日本という国を打ち出してはいきません」
と言った人がいた。
あなたの会社(主観)が、そう思うのは全くもって構わない。
でもあなたの会社を見る人(客観)は、どう評価するだろうか。

国籍をほぼ無にしてしまう、多国籍企業というあり方はある。
コカ・コーラはアメリカから来たと感じるが、日本で生産されたコカ・コーラは?
アップルはアメリカの企業だけれど、世界中で消費されるiPhoneはどこから来た、と言い切りにくい。
ネスレは?クノールは?ペプシコは?P&Gは?

あ、自分で書き出して自滅するような終わりになってしまった。
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by dezagen | 2013-11-11 03:11 | その他
『日本ブランドが世界を巡る』終了
ライター、渡部のほうです。
地味ながら、約5年(62回)続けてきた日経デザインの連載、『日本ブランドが世界を巡る』は来月の12月号で終了。
原稿も入稿して、一段落というところ。
今月の11月号と、次号とでこれまで5年間分のまとめを書いたのだが、書き切れなかったというか、余談的過ぎて入れなかったというか、そんな話を。

『日本ブランドが世界を巡る』がスタートしたのは2008年8月号から。
当初の目的は、海外に行くと車や家電以外の、日用品や食品の分野でも日本の製品が色々出ているのだけれど、割と国内でも知られていないので、そのパッケージの違いなどをコラム風に紹介したい、というものだった。
下川編集長にその話をしたのは、連載スタートよりかなり前だったのだが、なかなか通らず、でもしつこく粘って話していたら、やっとOKが出た。が、そこは目と鼻の利く下川編集長だけあって、企画の甘さをビシっと指摘されたのだった。
確か
「面白おかしい話にしないで、ちゃんと、パッケージがこう変わったから、この国や地域で受け入れられている、という確証を入れること。世界市場を狙った日本のメーカーの参考になるような記事にすること」
というような指示だったと思う。

確証を、と言われてもなー、と思いつつ始めたのだけれど、売上額やパッケージの変化による消費者心理の違いなど、データがあまり出てこないことから印象論でまとめてしまったことも多々。
その辺は、マーケティングを軸とするデザイン誌=日経デザイン、という媒体ではやっぱりツメが甘かったかもしれない。

とはいえ、今の日本の製造業の様子を見ていると、やはり国内市場だけではなく、世界(主にアジア市場)に出て行かざるを得ない状況になっており、前例を知るにはいい企画だったのではないかと自分でも思っている(やや自慢)。
確かにそこにデータなどが入って、びしっと言い切る、日経ビジネス並の説得力があればもっとよかったのは否めないんだけど(やや反省)。

さておき、5年間も連載をやって、国内にあるメーカーの取材だけでなく、ネタを探すために自分でも旅行に行ったりしていて(数えてびっくりしたが、連載企画を思いついた前段階も含め、2005年〜2013年の8年間、53回海外に行っていた)徐々に分かってきたことがいくつかある。
その中でめぼしい話は、日経デザインの11月号と12月号に書いているので、繰り返し感もあるけれど、かなり気になったのは

1) 日本だけ常識が違う、ということが多くあること。
2) 個々のメーカー、ブランドがそれぞれに評価を得たり、ということはあるけれど、総合して「日本」「made in Japan」のブランド感というのは。日本人が思っているほどはない、ということ。
3) 世界的に韓国のブランド感が高まっていること。

という点。
総括すると、客観視に欠けている。

いや、まとめすぎかも。
客観視できているメーカーやブランドは強いけれど、日本を基準に考えてしまうと(例えば、日本の高品質に海外が「着いてこない」と考えてしまう、とか)どうもおかしなことになってしまう。

話をがらっと変えます。

私はイギリスのテレビドラマ(主にミステリもの、歴史もの)が好きで、ヒマが出来るとがーっとDVDまとめ見をしたりするのだが、最近の出物が『Ripper Street』
www.bbc.co.uk/programmes/p00wk6pq

1889年のロンドン、イーストエンドの警察署が舞台。ちょうど切り裂きジャックの連続殺人事件が起こって半年後、という設定。
イギリス人の刑事2人とアメリカ人外科医の3人がメインキャラクター。
もっと詳細な解説はこちらで
http://mystery.co.jp/program/ripper_street/midokoro.html

このドラマがうまいなーと思わせるのは、イギリス人に向けたイギリスのお話、ではなく、海外に向けて作った客観的に見たイギリスのお話を「作り上げている」ということ。
実際、イギリスのBBCとBBCアメリカの共同制作で、当初から海外向けを念頭に置いている。

ロンドン設定だけれど、湾岸に近く、船でやってきた外国人も多い(裕福な人もいれば、着の身着のままで逃げてきた亡命者もいれば、様々)。メインキャラクターの中にアメリカ人が置いたことで、イギリスらしさが引き立つ、という方法。
スピードのある話の展開や、コスチュームや大道具、小道具の作りなどディテールも素晴らしいのだけれど、目線を「外国人」にしておくことで、当のイギリス人が普通すぎて取りあげなさそうなものもきちんと伝えている。

『Ripper Street』を見ていて、改めて感じたのは、国のブランド感を上げる手段として、映画、ドラマ、音楽、小説、この4つはかなり大きい、特に映画とドラマは複合的に、かつ分かりやすく浸透する、ということ。

悲しいかな、現在のイギリスの製造業はボロボロである。
(上等なツイード、陶磁器、自転車、紳士用品、など細かく見て行けば、まだ輸出できるものもあるけれど)
ブツとしてイギリスすごい、と思わせるものは少ないものの、それでもイギリスというブランド力は強い。
映画、ドラマ、音楽、小説などで文化をガンガン輸出して、イギリスのイメージをコンスタントに世界にお届けしているからなのだと思う。

それが必ずしも今の現実のイギリスと合致するとは限らない。
007みたいなイギリス人に会ったことないし、ホテルのアフタヌーンティーを楽しんでいるのは日本人や中国人やアラブ系の人々だし、すえたビールの香りのするパブはもうなかなか見当たらないし、Ripper Streetに描かれるような陰鬱なロンドンを探しに今のイーストエンドに行ったところで、お洒落なセレクトショップや小物雑貨のお店と、アルチザンコーヒーのいい香りにぶち当たって、肩すかしを食らうだけであろう。

それでもイギリスのブランド力が高いのは、繰り返しになっちゃうけど、映画、ドラマ、音楽、小説など文化を売り、イメージを売り続けているからである。

で、日本はどうか。
海外で普通に上映されている日本の映画は?
村上春樹のようなインテリ向けではなく、一般的に読まれる小説は?
ない。全然ない。
その代わり、アニメと漫画は売れている。

海外から見て、今の日本、あるいはmade in Japanは、アニメや漫画で作られたファンタジーワールドとして評価できるけれど(全然見てない人もいるにせよ)、その世界観と、日本の製造業が謳う高品質が合致していない、不思議な国である。
ただうちの繊維は質がいい、うちの金属製品は仕上げが美しい、と言ったところで、その背景にあるストーリー性を作り、見せなければ、なかなか消費者はイメージしずらい。

韓国はその点、うまいなーと思わされることしばしばなのだが、その話はまた別の機会に。
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by dezagen | 2013-11-11 02:03 | その他