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デザイナー紹介:佐藤亜沙美さん
編集宮後です。
久しぶりにデザイナー紹介記事です。

デザイナーの佐藤亜沙美さんから独立のお知らせをいただいたので、早速お会いしてきました。佐藤さんは祖父江慎さんのコズフィッシュに8年在籍したのち、今夏に独立。現在、神保町の元スタジオイワトがあったビルの3階に事務所を構えていらっしゃるそうです。

このブログでも紹介した『生誕100年記念 瑛九展』の図録は、コズフィッシュ時代に佐藤さんが手がけたもの。ほかにも『ファッションフード、あります』やINAX(現LIXIL出版)のシリーズ書籍など、以前から気になっていた装丁も佐藤さん担当ということがわかり、ぜひお話をうかがってみたいと思ったのでした。

最近のお仕事をいろいろ見せてもらったので、その一部をご紹介します。
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こちらは、造本装幀コンクールを受賞した『ギャートルズ』①②③。特色を使った本文といい、板紙に箔押しを施したコデックス装の表紙といい、普通ではないたたずまいが強烈に印象に残る本です。この本の造本について、2月20日に印刷博物館でトークイベントがあるそうなので、ご興味のある方はぜひ。


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正方形の判型を踏襲し、毎回、興味深いテーマが展開されているLIXIL出版のシリーズからは、こちらの本『海藻』をご紹介。表紙のエンボスはグロスPPを貼った上から箔押に使われた版を空押ししています。実はこの版、1枚の銅版を切り分けて、押したもの。版をカットして押すという斬新な発想にびっくりさせられます。

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有名な古典を新しい装丁で見せたアランの『幸福論』の装丁もすごい。中味は6冊とも同じで、帯の色だけ変えて6種類つくったのだとか。この写真以外に白バージョンを加えた6種類があるそうです。私も以前チャレンジしましたが、実現できませんでした。どうやって実現できたのかうかがったところ、色ごとに1つずつ別のISBN(書籍の識別番号)をつけて流通させたのだとか。佐藤さんもすごいけれど、OKしてくれた出版社もすごいと思います(拍手)。

ここまではコズフィッシュ時代のお仕事。そしてここからは独立してからのお仕事です。

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いとうせいこうさんの『親愛なる』と『キッチュなモノからすてがたきモノまで 文化屋雑貨店』。どちらもぱっと見ただけで、ただならぬたたずまい。手にとってじっくり見ると、書体や印刷加工へのこだわりが感じられて、思わず買って置いておきたいと思わせる本です。

佐藤さんが手がける本はどれも本好きの心に刺さる、買って持っていたいと思うものが多い気がします。コズフィッシュ時代に培った印刷加工の知識がベースとなり、ご自身でそれを昇華させているのではないでしょうか。

取材ということで話をうかがっていたのですが、途中から「どうしたら、面白い本がつくれるか」という話で意気投合。取次に却下されない特殊本の作り方とか、特殊仕様を出版社にOKしてもらうためのノウハウとか、デザイナーと編集者の実務話で盛り上がってしまいました。結局、チャレンジ精神ある編集者や出版社、デザイナー、印刷加工会社が連携していけば、もっと面白い本がたくさんできるのでは?という結論に達し、この日はお開きに。

高い紙が使えない、特殊加工はダメなど、特殊仕様の本がつくりづらい出版社もありますが、一方で面白い本をつくっている出版社もあります。他にはない本をつくりたいと考えている編集者のみなさん、ぜひ佐藤さんにご連絡を。

佐藤さんのお仕事はこちらのウェブサイトでどうぞ。
http://www.satosankai.jp/
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by dezagen | 2014-12-22 23:12 | デザイナー紹介 | Comments(0)
「現代デザイン論」について思うこと
ライター渡部のほうです。ブログ久々。

現在、東京造形大学で「現代デザイン論」という講義を担当しています。
ここで悩ましいのは「現代デザイン」とは何か?という点。
デザインとは何か、というテーマは様々に語られているので、それは一旦置いておいて、
難しいのは「現代」の定義です。

私の家のPCに入っている国語事典「スーパー大辞林」の中で、「現代」とは
1 現在の時代。その人が生きている,今の時代。
2 歴史の時代区分の一。世界史的には一般に,大衆社会の成立をみた一九世紀末以後,あるいは資本主義社会と社会主義社会の並立した第一次大戦後をさすが,日本史では,第二次大戦後をさすことが多い。
とのこと。
2に沿って、19世紀末以降、にしてしまうと「近代デザイン」だろうし、「日本史では第二次世界大戦後」と言われても、私の担当授業内の話になってしまいますが、50年代〜2000年代までは「グラフィックデザイン史」という項目でカバーしています。
つまり、2 では難しい。
では、1 の定義、現在の時代。その人が生きている,今の時代。 とすると、今、何が起こっているのか、を伝えることになります。

実際、私のやっている「現代デザイン論」では、今起こっていることや今あるものについて紹介する方法を取っています。
キャンパスノートやアラビックヤマトなどの文具もあれば、マジックリンやカップヌードル、ポッキーなどパッケージの世界展開の話もあれば、家具やインテリアデザインイベントの話もします。
「現代デザイン論」と名前は付いているものの、「論」を1から10まで順序立って説明するのではなく、断片をザクザクと見せていく、という方法です。

なぜかと言えば、現代が現在進行形だけにそれを総括して論ずる、ということが難しいからです。
(とはいえ、最終週は総括の話を入れないと、とは思っていますが)
断片として見せている、もう一つの理由に、今のデザインないし文化そのものが、非常に断片的だから、というのもあります。

50年代から80年代くらいまでマスメディアが「こうなんだよ」と言い、読者や視聴者が「そうなんだ」という、大筋で単一な流れがある時代が続いていました。
ところが90年代から徐々にインターネットとソーシャルメディアの普及し、個の力がぐっと強くなり、個が個に対してメッセージを発信する、それを受け取るようになりました。私はこの状況を「断片化」と捉えています。

次の課題は、どう総括するのか、です。
実は昨年度まで、この断片化したデザインのトピックを紹介するだけでそれぞれの学期を終わっていました。
ところが、別の授業での話ですが、学生から「もっと全体的な流れを説明して欲しかった」という声がありました。
ライター業では、記事、つまり断片化されたトピックを突き詰めて書くことが求められます。そうしたことを積み重ねて行くことで、大まかでも全貌が次第に見えてくる、時代の流れが見えてくる。それを基礎情報として自分の中に入れておいて、また断片について書く。この繰り返しです。

学生も断片を見ることで全貌は分かるよね?と勝手に思っていたのですが、どうもそうではないらしい。
自分の授業のツメが甘かったことを露呈するような話ですが、私の授業には俯瞰する視点が非常に欠けていたのでした。
現在進行形のものを俯瞰することは非常に難しいのですが、それでもやはり求められていることは応えなければ。

自分の頭内だけでは無理なので、現代デザイン、contemporary designと名の付くものを手当たり次第、読んで、見て、と、今(最終講義は17日、あと2日)はそのぎゅぎゅぎゅと頭に入れたものを、整理しているところです。

ネット上での資料で面白いと思ったのが、デザインジャーナリスト藤崎圭一郎さんのブログ「藤崎圭一郎の雑思録」での
モダニズムについて
http://cabanon.exblog.jp/21368350/

また「デザイナー/デザイン業 - 中部経済産業局ホームページ」のpdf書類のように、デザインを文化として捉えるのではなく、あくまで産業の一つとして考える見方も参考になります。
http://www.chubu.meti.go.jp/tyosa/creative/i.pdf


ここでは、デザイナー/デザイン業 の仕事内容から、報酬ガイドラインを作ろうとする現在の動き、今後の重要性などが分かりやすく書かれています。
(全国をカバーする統計局のデータでもどこかにあるはずなのですが、データが膨大なため、デザイン業を説明するページを見つけられませんでした。)

こんな感じで色んな資料を見ながら、今「現代はどうなっているのか」を俯瞰し、総括する話をまとめているところです。

授業とは別の話になりますが、
RCA(Royal Collage of Art)のサラ・ティズリー教授とで、「Contemporary Design History =現代デザイン‘史’」とは何か、を探るワークショップを行ったプロジェクトが、ウエブサイトになりました。
http://designhistoryofnow.rca.ac.uk
このウェブサイト上で(も)この議題というか永遠の課題を語って行くことになります(ただ、更新頻度はよく分かりません。ひょっとしたら1年に1回とかになるかも)。
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by dezagen | 2014-12-15 11:09 | その他
世界のブックデザイン2013-14(展示風景)
編集宮後です。
「世界のブックデザイン2013-14 feat.スイスのブックデザイン」の展示を見てきました。今年はスイスとの国交樹立150周年ということで、スイスのブックデザイン約40点の特別展示も。

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「2014年世界で最も美しい本」受賞作14点のうち、8点が展覧会会場入り口に展示され、中央にスイスのブックデザイン、それを取り囲むように各国の造本コンクールで受賞した本が展示されています。展示されているのは、オーストリア、スイス、日本、中国、イラン、オランダ、ドイツの7カ国の本です。



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あと今年のトピックスはイランの造本コンクール受賞作品が展示されていたこと。見てください、この本。皮革に型押?彫刻?した工芸品のような造本。中東方面の本は洋書店でもなかなか見られないので、そうした本がまとめて見られるのは貴重です。

会場には全部で約200冊の本が展示されていますが、建築の作品集、学術論文を本にしたもの、美術大学生徒の作品集など、一般流通しない入手困難な本も多く、展示用に本を取り寄せるのが大変なのだそう。こうして一堂に拝見できる機会があるのは大変ありがたいことです。



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『Gestaltung der Grundlagen』(基礎のデザイン)
スイス
チューリッヒ芸術大学デザイン入門コースに関する本。16世紀から現在までのデザイン造形について説明した本ですが、ポップな色合いで楽しい造本にっています。カバーの中にも印刷されていたり、造本も凝っています。



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『De Krant van Gisteren  Uitgelezen Hergebruik』(昨日新聞 選択された再利用)
オランダ
珍書多発国オランダから刊行。古新聞がアートやデザインの分野で作品として再利用されている事例を紹介した作品集で、実際に新聞用紙に印刷されています。著者はオランダほか様々な国で新聞のデザインを手がけてきたkoos Staal。著者の新聞愛が炸裂した本。



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『Irma Boom The architecture of the book』(イルマ・ブーム 本の構造)
オランダ
デザイナー、イルマ・ブームのブックデザインを集めた作品集。もともと刊行されていたミニブックに100ページ追加して再発行された際、面積が64倍のデラックス版も刊行。ミニブックのほうは日本でも一部の洋書店などで購入可能。



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『Closed Cities』(閉ざされた街)
ドイツ
人工的につくられた都市空間に人が住まなくなったあとの状態を撮影した写真集。人が去ったあとの不気味な静けさが印象的。完全に朽ち果てたのではなく、この間まで人がいた感じが独特の空虚感をかもしだしています。日本にも廃墟の作品集はありますが、こういう本はなかなか一般的に受け入れられないのが残念。

ほかにも素敵な本がたくさんあるので、ぜひ直接手にとってご覧ください。
展示は来年2015年2月22日まで印刷博物館にて開催中です。
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/141129/index.html
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by dezagen | 2014-12-10 07:56 | 展覧会 | Comments(0)