エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
<   2015年 12月 ( 5 )   > この月の画像一覧
世界のブックデザイン 2014-15[後編]
前編からの続きです。

私がひそかに珍本多発国と呼んでいるオランダから印象に残った本をご紹介。

都会で傷ついた鳥たちを手厚く処置し、再び自然に帰す保護施設に運び込まれた鳥を撮影した写真集。「なぜ、けがした鳥を撮影?」と思ったら、この施設でボランティアをしている写真家が撮影したのだとか。青い手袋をした保護員にかかえられた鳥が表紙。まさに治療中という感じのリアルな印象と、写真集としてのアート性がまざりあう不思議な本。

b0141474_17134015.jpg

『Vogels huilen niet klein --vogelled in de grote stad--』(鳥は啼かない 都会での鳥の苦しみ)
オランダ


タイトルどおり、オランダの堤防の写真をまとめた本。延々と堤防ばかり出てきます。おそらくオランダの土木建築関係者向けにつくられた専門書だと思うので、資料的価値の高い本ですが、門外漢から見るとかなりシュール。

b0141474_17134680.jpg

『Dutch Dikes / Dijken van Nederland』(オランダの堤防)
オランダ


こちらは中国の受賞作品。
毎年、「これでもか」というインパクトのある造本が多かったのですが、
落ち着いた感じの装幀が多かったのが意外でした。
b0141474_17133256.jpg



いろいろな職人の仕事を紹介した本。この本自体の造本もおもしろいのですが、華美な感じではなく、おちついたいいかんじに仕上がっています。

b0141474_1713575.jpg

『黟県百工』
中国


音楽家ルー・リードに関する文章の本。ぱっと見、ルー・リードの本って全然わからないくらい地味ですが、よくみると表紙に文字のエンボスが施されていたり、細かい配慮が感じされる本。


b0141474_1714898.jpg

『pass thru Fire』(パス スルー ファイア)
中国 


上海のブックデザイナーの作品を集めた本。表紙のタイトル文字(漢字)の横画を型抜きして、読ませることと、視覚的効果の両方を成立させています。

b0141474_17141446.jpg

『上海書籍設計師作品集』


最後に日本の造本装幀コンクールの受賞作から。

武蔵野美術大学 美術館・図書館のデジタルアーカイブをまとめた書籍。全5巻を1冊にまとめて、手製本した特装本だそう。

b0141474_17141971.jpg

『博物図譜とデジタルアーカイブ特装本』
日本 文部科学大臣賞、日本印刷産業連合会会長賞


まだまだ紹介したい本はありますが、現物をじかに見ていただければと思います。
展覧会情報はこちら。来年2月末までの開催です。

日時:2015年12月5日(土)~2016年2月28日(日) 月曜日休館
場所:印刷博物館(東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川ビル)
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/151205/index.html

関連イベント:
トークショー「2015年造本装幀コンクール受賞者「受賞作」を語る」
2016年1月30日(土) 15:00~17:00

美篶堂による製本ワークショップ
2016年2月7日(日)10:10~12:40 中級「フランス装」
14:00~17:00 中級「B6各背上製ノート」


過去に書いた記事のリンクはこちら。

世界のブックデザイン2012-13
世界のブックデザイン2012-2013[続き]
世界のブックデザイン2011-12
世界のブックデザイン2010-11展
世界のブックデザイン2009-10
世界のブックデザイン2008-2009展[前編]
世界のブックデザイン2008-2009展[後編]
[PR]
by dezagen | 2015-12-11 07:14 | 展覧会 | Comments(2)
世界のブックデザイン 2014-15[前編]
編集宮後です。
毎年、開催を心待ちにしている展覧会「世界のブックデザイン2014-2015」を見てきました。
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/151205/index.html

今年で14回目をむかえ、「世界で最も美しい本コンクール2015」の受賞図書13点をはじめ、日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国と今回初めて紹介するデンマーク、計8カ国のコンクール入選図書、およそ200点を展示。現物を手にとって見ることができる、すばらしい展覧会です。

b0141474_17114451.jpg


世界各国で開催されているブックデザイン賞の受賞作品を集めて審査される「世界で最も美しい本コンクール」の受賞作品が入口のところに展示されています。

2015年度のグランプリ、金の活字賞の重作品はこちら。ファッション写真の写真集のような雑誌のような体裁のビジュアルブック。きわどい写真もある、アナーキーさが評価されたのかどうか、評価されたポイントが謎の一冊。

b0141474_17115258.jpg

『無題〈セプテンバー・マガジン〉 ポール・エリマン2013』
ベルギー 金の活字賞


こちらは日本からの受賞。光をあてて影から生まれる物語を楽しむポップアップ絵本。ポップアップ部分はレーザーカットで型抜きされ、すべて手製本でつくられているので、とても繊細です。はじめて見せてもらったときに感動して、大量生産できる形にリメイクした普及版を出版させていただきました。普及版では、ポップアップ部分の形状を変えて型抜きにしています。光と影の繊細な動きはこちらの動画をごらんください。http://www.silhouettebooks.jp/

b0141474_17115831.jpg

b0141474_1712277.jpg

『モーション・シルエット』
日本 銅賞


同じ位置から水平線を撮影した写真をつなげた写真集。なんと各ページを、児童用の絵本のように張り合わせて製本しています。厚みが7cmくらいあって凶器になりそうなくらい重いですが、時間を忘れてながめていたいような本。2012部のみの限定生産で、1冊 数万円するとか。

b0141474_17121346.jpg

『New holizons』
オランダ 銅賞
212ページ


現実に存在しない動物を集めた本。本のつくりが立派で、イラストも緻密なので、本当にそういう動物がいそうな気にさせるのがポイント。本文組版も美しいです。

b0141474_17122035.jpg

b0141474_17122479.jpg

『Ein unglaubliches Bestiarium』(本物の怪物 信じがたい動物寓話)
ドイツ


赤いフィルムをあてると、赤い絵の部分が消えて、水色の絵の部分が浮かびあがり、違うストーリーが楽しめる本。カラーフィルムをあてて読む本は昔からありますが、洗練された絵が印象的。児童書ですが、大人でも十分楽しめます。

b0141474_17123575.jpg

b0141474_17123856.jpg

『Das magische Zauberlupenbuch』(魔法の虫めがねの本)
ドイツ


不朽の名作、レ・ミゼラブルを新鮮な造本で見せている本。小口側に著者の顔写真が印刷されていて、インパクトも十分。背は赤、白、青のフランス国旗をイメージ。

b0141474_17124729.jpg

b0141474_17125698.jpg

『De elendige』(レ・ミゼラブル)
デンマーク

後編につづきます。
[PR]
by dezagen | 2015-12-11 07:13 | 展覧会 | Comments(0)
台北で買ってきた本
台北で買ってきた本の紹介です。以下は、田園城市で購入。

b0141474_18311438.jpg

b0141474_18311891.jpg

建築雑誌『dA』。日本人建築家、伊東豊雄さんの特集。トレーシングペーパーの頁を重ねて、建築の構造がわかるようになっていたり、頁の上下が分断されていたり、「これでもか!」というくらい、特殊加工てんこもりな雑誌(写真ではわかりづらいが、表紙には細かい丸が型抜きされている!)。印刷加工の雑誌ではなく、建築雑誌でこの造本というのがすごい。日本にもこのくらい突き抜けた建築雑誌もがあればいいのに。


b0141474_18312425.jpg

ブックデザインの研究をしている李志銘さんの著書『装幀時代』。台湾の装幀の歴史を丁寧に紹介した本のようだが、残念ながら文章が読めず。カバーが二つ折りになっていたり、グロス紙の上にマットのつや消し黒でタイトルを印刷したり、細部にも配慮が感じられる。


b0141474_18313765.jpg

b0141474_18314152.jpg

世界各地の伝統的な織物を紹介した本。織り手の女性のインタビュー集でもあり、写真集でもあり、記録集でもあるという、ビジュアルを重視したつくり。一点一点違う柄の織り物が表紙に巻かれている。


b0141474_18314825.jpg

b0141474_18315276.jpg

b0141474_1831568.jpg

漢聲で即買いしてきたバックナンバー。台湾に伝わる切り絵を集めた本で、赤やマゼンタなどのビビッドな色の紙に黒1色で刷られた切り絵が美しい。3冊セット。


b0141474_1832673.jpg

b0141474_1832673.jpg

タイトルどおり、活字についての本。鋳造、文選、組版など、活版印刷に関する写真と文章で構成。写真が非常に美しく、手元に置いておきたい一冊。日星鑄字行でも買える。


田園城市
台北市中山區中山北路二段72巷6號
http://gardencitypublishers.blogspot.tw

漢聲巷門市
台北市八德路4段72巷16弄1號1樓
http://www.hanshenggifts.com/front/bin/ptlist.phtml?Category=100231

臺灣活版印刷文化保存協會 ╳ 日星鑄字行
台北市太原路97巷13號
http://rixingtypography.blogspot.jp
[PR]
by dezagen | 2015-12-07 01:12 | | Comments(2)
本をめぐる旅@台北
編集宮後です。
藝大で行われた台湾ブックデザインのシンポジウムを聞いたあと、その週末に台北の書店や出版社に行ってきました。

b0141474_18275530.jpg

b0141474_1828038.jpg


こちらは『T5』でも紹介されていた出版社、田園都市。1階に書店スペース、社長室、編集室があり、地下のギャラリーでは「ドイツの美しい本」の展示が行われていました。

写真は代表の陳さんと編集の劉さん。陳さんは年に数回、日本を訪れては書店をまわり、気に入った書籍をまとめ買いしていくのだとか。「今度行きたい書店」のリストを見せていただきましたが、どこで情報収集をしているのか、その充実ぶりに驚きました。

同業者同士ということもあり、初版は何部くらい刷っているのか?、どうやって利益をあげているのか?など、わりとつっこんだ話もしてくださいました(ここには書けないけど)。

台湾には再販制度がないので、新刊でも書店で値引きされてしまうとのこと。20%OFFになっている新刊もあり、ちょっとびっくりしました。割引販売されると出版社の利益も減ってしまうため、原価を下げざるを得ず、そうすると原価がかかる凝った造本がしづらくなってしまいます。

そういった事情もあり、一般書店で流通する本はコストカットせざるをえないのだそうです。その反動として、個性的な本をつくる出版社やデザイナーが出てきて、その動きが注目されているのかなと思いました。日本の出版事情はそこまで厳しくはないので、凝った造本の書籍を一般書店に流通させることは可能ですし、実際におもしろい本もたくさんあります。それぞれの国の出版事情が違うので、いちがいに比較はできないのかなあというのが、率直な感想です。

b0141474_18293567.jpg

b0141474_18293996.jpg


こちらは、漢聲出版社の直営ショップです。『漢聲』は台湾に古くから伝わる伝承文化や民族風習を伝える雑誌で、独特の造本がすばらしいことでも有名。その出版社が経営する直営店があるというので、行ってきました。『漢聲』のバックナンバーのほか、ポストカードやメモ帳、雑貨など、おみやげによろこばれそうなものがずらりと並んでいます。ずっとほしかった『漢聲』のバックナンバーが日本の半額くらいで売っていたので
即買いしてしまいました。

b0141474_1829536.jpg


この写真はBOVEN雑誌図書館の入り口です。台湾や日本の雑誌のバックナンバーや書籍を事由に閲覧できる図書室で、入り口で300台湾ドルを払うと、一日ゆっくり本を見られます。日本のファッション雑誌やライフスタイル本もたくさんありました。

b0141474_1830024.jpg

b0141474_1830497.jpg


『T5』でも紹介されていた活字鋳造所の日星鑄字行。現在は鋳造のかたわら、観光客が自由に見学できるように整備されています。活字のばら売りも行っており、好きな活字をハンコにしてくれるサービスも。2号活字を4つ組み合わせて、自分の名前のハンコをつくってもらいました。1階に活字棚、その奥に鋳造機が数台あり、現在も鋳造を行っているそうです。地下のスペースは書籍資料の保管とトークイベントなどで使われるスペース。ボランティアの方々も多く、みなさんで手分けして、お客さんの文選をしていました。

台湾の書店といえば、やはり誠品書店。24時間営業の店舗もあって本当にうらしゃましいです。松山空港に近い場所に、誠品書店が経営するホテル「誠品行旅」もオープン。ホテルのあるあたり一帯はタバコ工場をリノベーションした文化総合施設「松山文創園区」と呼ばれるエリアで、とても気持ちのいい場所でした。

そうしたおしゃれ書店のほか、昔からある書店も見てきました。台北駅の南側にある重慶南路のあたりには書店や塾が連なっており、資格試験の本がどーんと積まれていました。台北在住の知人いわく、公務員試験を受ける人が多いので、その対策本が売れるのだとか。それ以外だと経済関係の本が多く、芸術系書籍は少ない印象。並製本が多く、本文用紙も微妙に薄いのはコストカットのためでしょうか。編集者の苦労がしのばれます。

言葉が通じない国でも、その国の本を見ていると、「編集者はこういうことを考えながら、この本をつくったのかな」と思いをめぐらすことができます。本を通じて、対話できるのが楽しい。日本で理解されなかった本が外国で評価されたりすると、不思議な気持ちになると同時に、国境を越えて伝わるビジュアルの力を痛感します。
[PR]
by dezagen | 2015-12-07 00:47 | | Comments(0)
台湾のブックデザインの今を伝える本『T5』
編集宮後です。
ずっとためてしまっていた台湾ネタを連続投下します。

台湾のブックデザインの最前線を紹介する書籍『T5』が
東京藝術大学出版会から刊行されました。

b0141474_10564549.jpg

b0141474_115451.jpg


聶永真(アーロン・ニエ)、王志弘、小子、霧室、何佳興ら5組のデザイナーと
日星鑄字行、田園都市、雄獅美術など活字鋳造所や出版社のインタビュー記事、
李志銘による台湾の書籍に関する記事が掲載されています。
(インタビュー記事は渡部さんと雪朱里さんが担当)

こちらにウェブサイトがあり、5組のデザイナーのインタビュー記事を
読むことができます。
http://t5.geidai.ac.jp

あまり書店に配本されてないようなので、本の入手方法などは
こちらのFacebookで確認していただいたほうがよさそうです。
https://www.facebook.com/T5geidai/?fref=ts
[PR]
by dezagen | 2015-12-06 23:18 | | Comments(0)