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取材のお願いの仕方 前編
前回の「取材後のまとめかた」と順番が前後してしまいますが、今回は最初に取材を依頼するときのお話を。

「これ誰」では、ロングセラー商品や企業のロゴなどを取材することは多いので、たいがいの取材は企業へのアプローチから始まります。例えば、Aという企業の商品Bが誰によってどうデザインされたのかを調べたいとき、企業の担当者とどんなやりとりをしているのか、ご紹介していきましょう。

「美術出版社で『デザインの現場』というデザイン専門誌の編集をしております宮後と申します」

私がこう言った時点で、だいたい電話口からは「『デザインの現場』って何? そんな雑誌は知らないけど???」と身構えている感じが伝わってきます。ここでめげてはいけません。続けて、

「弊誌連載でロングセラー商品のデザインを紹介する記事があるのですが、御社の商品Bはデザインも素晴らしく、どなたがデザインされたのか調べております。御社でお分かりになりますでしょうか? ご担当者につないでいただけますか?」

と一気にしゃべってしまいます。雑誌の連載内容をくどくどとしゃべってはいけません。最初に電話をとった人には関係ない事柄ですから。とにかく商品Bをほめて、相手に警戒心を抱かせないことが大切です。ここをクリアすれば、スムーズに商品担当者か広報担当者につないでもらえます。月曜日朝イチとか、夕方など、忙しい時間をさけて電話し、相手にきちんとした対応をしてもらうのがコツです。

ここで誰に電話がつながれるかが運命の分かれ道。運良く、デザインに理解がある担当者や、真面目で感じのよい担当者にあたれば、我々の面倒くさいリクエストに対しても何とか社内で聞いてみようと骨を折ってくれます。

反対に、そんな取材に協力してもメリットがない、面倒くさいから対応したくないと思う担当者だったら、終わりです。そういう担当者に当たらないようにするには、電話をかける前に念を送り、ひたすら祈るしかありません。

いい担当者にあたった時は本当にうれしくて、その会社のことまで好きになってしまいます。いい人材は企業の財産なんだなあとつくづく思います。

次回後編では実際のやりとりをご紹介します。お楽しみに!
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# by dezagen | 2008-09-26 17:16 | Comments(0)
工事
 都内某所でのアートイベントに行ってきました。

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 と、いうのは嘘で、東京駅の工事中の様子である。
 8月半ば、水戸芸術館の帰りに日本橋口から入ったのだが、猛烈に白い。覆われてる。これが延々と続き、アート作品に紛れ込んでしまったかのようで、ジュリアン・オピーの展覧会より興奮してしまった。
 私は分かりやすいところで「クリストか?」と思ったが、同行していたライターのKさんは「マルタン・マルジェラのお店みたい」、写真を見た宮後さんは「青いナナメのテープはダニエル・ビュランの作品のよう」と言う。

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 アート性があるかどうかはともかくとしても、この強烈なインパクトは、徹底した白さと律儀なまでの整然さに起因する。シートだけでなくメッシュ、テープ、シャッターも白で統一し、ほとんど隙間なくぴっちりと、水平器で計ったのか?と思うほどテープは垂直水平に貼られている(しかもべろべろはがれていたりもしない)。

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 素材を選び、覆い方の指示を出しているのは建築事務所や施工会社だろうから、「これ、誰がデザインしたの?」と聞きに行くことも可能とはいえ、日々刻々と変わる工事現場で偶発的に起こる覆いの形は「誰が」と聞いたところで分かるものではない。強いて言えば、工事現場の人。その人にしても意図して意匠を作っているわけではない。スナップの状態だって今は違う様子になっているに違いない。
 駅工事といえば、新宿駅工事では構内警備員の佐藤修悦氏による文字表示が話題になり「修悦体」とまで「名」の付いたデザイン作品にまで昇華していたが、これはかなり希有な例。アートでもデザインでもない、強いて言えば現代民芸か。
 
 日本人に染みついた律儀さ、親切心、美感などなどが「なんだかよく分からないけどすごい感じ」現象として街の至るところに現れてしまう。しかも見るのはタダ。なんと素敵な国、ニッポン。
 
 おまけ:
 気が付いたら東北方面に行く新幹線の表示が、大変分かりやすくなっていた。比べちゃ悪いけど、西方面の表示と比べると一目瞭然。
 これはデザイナー様の仕事です。

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# by dezagen | 2008-09-08 16:10
記事のまとめ方
前回は「取材先の決め方」について書いたので、今回はその続き、「取材後のまとめ方」についてお話したいと思います。

実はこの連載は、「誰がデザインしたのか?」が分かればいいのではなくて、その上で読み物としてどう面白くまとめるかが難しいのです。例えば、発売以来ずっとパッケージが変わっていない(ように見える)老舗商品が時代に合わせてマイナーチェンジをしていたり、といった話はオチが付けやすいんですが、そうでない場合は、筆者の渡部さんと一緒に取材後のまとめ方に頭を悩ませるのです。

例えば、誰がデザインしたのかは分かったけれど、そこから話はふくらまない場合とか、取材したはいいものの、詳しく語れる方にたどり着けなかった場合などは大変です。取材後、渡部さんと一緒に喫茶店に入り、緊急ミーティング(笑)です。今までに調べたこと、取材で分かったことをすべて洗い出し、そこから何か結論が導き出せないか、うんうんうなりながら話のオチを考えるのです。

取材先が東京以外の企業の場合は、こちらから質問を送り、メールやFAXで答えていただいていたので、さらに大変でした。こちらが聞きたいことが分からなかったり、意思疎通ができなかったり。

そんな場合でも渡部さんと一緒に話していると、なんとなく着地点が見えてくるから不思議です。全60回の連載の中にはかなり難産だった回もありましたが、それを感じさせない記事になっているかどうかは、みなさんのご判断にお任せします。

次回は、「取材依頼時のかけひき」について書きたいと思います。各企業広報担当者の方々にどのように取材依頼をしていたか、記事にならなさそうな場合をどうやって察知するかなど、取材前の裏話をお伝えいたします。どうぞ、お楽しみに!

ロゴや書体についての話もしたいですが、またの回に。
こんな本もつくりました↓
http://book.bijutsu.co.jp/books/2008/08/book2.html
http://www.bijutsu.co.jp/dezagen/designers_news/080827/01.html
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# by dezagen | 2008-08-31 11:27 | Comments(0)
マルマンのスケッチブック
 黄色と深緑のコンビネーションも小粋な表紙を見れば誰もが「ああ、あれあれ」と思い出すマルマンのスケッチブック。今年は量産化が始まってから50周年を記念し、メモ帳やノート、ファッションブランドとのコラボレーション企画など、表紙のパターン使った様々なキャンペーン商品が出ている。

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スケッチブックとキャンペーン商品


 登場以来50年、バーコードの追加や品番の変更があったくらいで、デザインはほとんど変わっていないというのにまず驚く。
「これまでデザインを変更しようという提案もありませんでした。売り上げが落ちませんので、変える必要がないんです」と、マルマン企画グループの渥美要氏は言う。
 さらに驚いたのは、認知度の高いこのデザインが学生の持ち込みだった、ということ。手がけた奈良部恵三氏は美術学校ではなく青山学院大学に在籍していた、いわば素人。その後、奈良部氏はグラフィックデザイナーの道を歩むことになるが、素人でもセンスを見抜いて採用した社長の目の鋭さに感服する。
 当時の社長(現名誉相談役)井口秀夫氏はかなり先進的な人物だった。海外渡航が難しかった時代にドイツの機械を入れ、日本でいち早くスパイラル綴じの量産化を可能にし(それまでは職人の方が一個一個手でねじり入れていた、というのもすごい)、60年代にはロゴ、シンボルマーク、クロッキー帳のデザインに原弘氏(※)を起用している。

※ 原弘(はら・ひろむ)1903年長野生。21年東京府立工芸学校(現東京都立工芸高等学校)卒業し、そのまま同校の教諭に就任。日本工房を経て、41年東方社入社、対外宣伝紙『FRONT』アートディレクションを手がける。51年日本宣伝美術界(日宣美)立ち上げ、60年日本デザインセンター設立など戦後日本のデザイン界を牽引した。86年没。

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原弘デザインのクロッキー帳(左)とシンボルマーク、ロゴタイプ

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新しいシンボルマークとロゴタイプ。デザインは成澤豪(なかよし図工室)


 マルマンは今年、スケッチブック50周年と同時に、ロゴとシンボルマークもリニューアルした。そのキャッチフレーズは「私たちマルマンは“変わらず”へと、変わります」。シンボルマークはスケッチブックの柄をモチーフとしたもので、ロゴは微調整に抑えている。これまで築いてきた歴史や財産を無駄にしない企業姿勢がうかがえる。
 スケッチブックのキャンペーンで出された特別商品の中には売れ行きがよく、定番化を望む声もあるが「売れたからといって定番商品にするかどうかは、慎重に見極めないといけません。そうでなければブランドとしての価値が薄まるおそれがありますから」と渥美氏。
 うーむ。これこそブランディングの真髄。
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# by dezagen | 2008-08-16 01:25
取材先の決め方
今日は、以前この本のトークショウをしたときにいただいた質問「取材先はどうやって決めるのですか? すんなりOKがでないときはどうするのですか?」について、お答えしたいと思います。雑誌連載していたときの話をしますね。

まず、取材先の決め方ですが、毎回「次のこれ誰取材、どうします〜?」という感じで、渡部さんと私で取材したいものの候補をいくつか挙げていきます。お互いが「これ、おもしろそう! 取材したい!」と思ったものから順に優先順位を付けまして、誰がデザインしたのか調べていくんです。

「Pasco」のロゴのように、すでに誰がデザインしたのか分かっていて、その背景をもう少し詳しく企業の方へ取材したい場合、反対に企業に聞かないと誰がデザインしたのか?まったく分からない場合など、いろいろな場合がありました。実際は、誰がデザインしたのか?分からずに、渡部さんと私で分担して企業にアタックしていたケースが多かったですね。

お察しのとおり、取材ができない場合も多々ありました。取材できない主な理由としては、1、いつ誰がデザインしたのか?企業内にも資料が残っていなくて分からない。2、取材に応じたところで企業側にあまりメリットがないと思われ、やんわりと断られる。3、誰がデザインしたのか?公開したくない。などなど。

1は、どうしようもないので、おとなしくあきらめます。今までの事例でいくと、ポリバケツや運転免許証などがそうでした。調べていただいたのですが、当時の資料がないので答えられないとのことでした。

2の場合も残念ですが、それも一つの企業姿勢ですから、まあ仕方ないかと。最近はデザインの認知度が上がってきたので、こういうパターンは減りましたが、連載を始めた2000年当初はまだデザイン携帯もなかった頃ですから、無理もありません。

問題は3です。誰がデザインしたのか?こちらの調べはついてるんですが、企業側が公表をOKしない場合です。非公開の理由を聞いてみると「デザイナー名が出ると、競合他社がそのデザイナーにデザインを頼むかもしれないので」「そのデザイナーの作品というより、自社のコンセプトでデザインしたものだから(個人名を出す必要はない)」など、なんだか悲しくなるお答えが。もっと胸を張って、「この人にデザインしてもらいました!」って言いましょうよ!

一通りねばってみた後、どうしてもダメなら、次候補の取材交渉へと切り替えます。こうして次々と取材交渉をしていくと、交渉の過程自体がなんだか宝探しみたいで、意外なデザイナーの名前に遭遇したあかつきには宝を探し当てたような気分になります。このワクワク感、誌面で伝わっていたでしょうか?
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# by dezagen | 2008-07-31 19:01 | Comments(0)