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製本というブラックボックス
編集宮後です。
本をつくる環境がますます厳しくなるなか、
最近、印刷会社への仕事の頼み方が変わってきているという話。

以前は、1つの出版社で何社かの印刷会社に御願いしたり、
個々の編集者がそれぞれ見積もりをとって安い印刷所へ発注したりしてましたが、
最近は、1つの印刷会社に発注を集中することで
総原価を下げようという動きが出ています。

印刷会社にとっては安定した受注が見込めますし、
出版社にとっても総原価が下がるので双方のメリットがあるわけです。

個人的には印刷会社がどこかということよりも
プロフェッショナルな営業や製版の人がいる印刷所と仕事がしたい。
別にそういう印刷所がすごく高くて頼めないというわけではないので、
やはり個人指名で御願いしたいわけです。

一般的に書籍の印刷では、このように「どこの印刷所へ御願いするか」という
話は出てきますが、「どこの製本所か?」という話はまず出てきません。
それは印刷所が自動的に製本所も手配してくれるので
どこの製本所で製本したか発注者側ではわからないのです。
これを私は「製本のブラックボックス化」と勝手に読んでいます。
(自社に製本設備を持っていて印刷から製本まで一貫して行う印刷所もあれば、
製本は製本所に出すところもあり、印刷所によってまちまちです)

ごく一般の綴じ方をする製本であれば、製本所におまかせでいいのかもしれませんが、
特別な仕様の本では、製本工程だけ別途、製本所に直接頼むようになりました。
そのほうが製本コストをおさえられ、なおかつ複雑な仕事を確実に御願いできるからです。

「それならみんなそうすればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、
製本工程だけ別に頼むということは、印刷所で刷った刷り本を製本所へ入れてもらったり
製本所から配本、納品の手配をしてもらったりと、担当者同士の綿密な連絡が必要になり
それらすべてを担当編集者がしなければならないことを意味します。
また出版社によっては、社内事情でそういう行為自体が許されなかったり
なかなか簡単にはできることではないのです。

誰にでも可能なわけでない方法ですが、このほうが全体のコストをおさえられ
しかもたいがいよい仕上がりになります。
たとえば、『空気の器の本』では、印刷は共同印刷さんに、
空気の器と封筒の制作は福永紙工さんに、全体の製本と封筒の貼付はベル製本さんに
御願いしました。皆様には面倒な仕事にも対応していただき、こころから感謝しています。

今後はこうした情報を皆様とも共有しながら、
もっとおもしろい本をつくる人が増えてくれることを願っています。
by dezagen | 2012-01-09 22:01 | | Comments(0)