前半からの続きです。
ここからは各国別に紹介していきます。
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[カナダ]
『Colosses: Mémories de portiers et récits de bars
(巨像:用心棒の回顧録とバーの物語)』
Sid Lee Collective発行
エンボスされた革張りの上製本を開くと、屈強な男たちの写真が続く。。。書名から察すると、バーにいる用心棒の写真集??? 荒々しいテーマですが、文字組や造本がかなり丁寧で上質な写真集に仕上がっています。出版者がなぜ用心棒の写真集をつくろうとしたのかは不明。謎です。
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[中国]
『介入』
中国建築工業出版社発行
建築家とデザイナーの対談集。本の真ん中にあいた穴を避けるように、中・英・日・韓の4カ国語による文章と写真が配置されています。中綴じですが、機械で綴じずに、糸を通して手製本されています。今年は他国の受賞書籍にはあまり奇抜な造本はなかったのですが、中国はトリッキーな本が多かったです。その中でもこの本が群を抜いていました。
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[ドイツ]
若いブックデザイナーのための奨励賞
『Nicht Sein
Über Suizide und Mögliche Ursachen
(非存在 自殺とその原因)』
ドイツのデザイン学生がつくった本(8部限定+30部増刷)。レーザーカットであけられた穴は実は棒グラフになっていて、ドイツ国内で自殺で亡くなった人数などを表しています。非常に重いテーマを、グレーとブルーの落ち着いた色の用紙と精緻なタイポグラフィで端正にまとめた作品。
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[オランダ]
『The Living Surface
An alternative biology book on stains
(息づく表層。シミをめぐる斬新な生物学の本)』
Jap Sam Books発行
例年、珍書が多発するオランダ。しかし、今年はあまり掘り出しものがなく、この本が目立っていました。アーティストが身の回りのシミを保存、撮影し、カラーチャートを作成。英語、フランス語、オランダ語をそれぞれ90度ずつ向きを変えて配置しています。(たぶん学術的価値はあまりないと思われる)奇妙なコテンンツを大まじめにデザインした珍書。
ほかにもおもしろい本がありましたが、このあたりで切り上げます。展示は2019年3月31日まで印刷博物館で開催。会期中、トークイベントや手製本のワークショップもあるそうです。
「世界のブックデザイン2017-18」
https://www.printing-museum.org/exhibition/pp/181215/