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imperfect エシカル消費のパッケージ その4
その3からの続き)

 とはいえ、当初から包装紙を目指していたのではなく、偶然の産物、と木住野は説明する。

「実はパッケージを定形で作るだけの準備期間 がなかった、というのが背景にあるんです。だったらお店で包むしかない。だから包装紙だけ作っておいて、店舗で店員が包むというパッケージに変えませんか?という提案をして受け入れてもらいました。
ブランドのメッセージ性が強いので、パッケージの中に言いたい事も沢山あるけれど、物によって産地も農園も違って、それぞれが異なる特色や試みがあるし、ブランドの支援アプローチもその農園によって様々になるわけですから、すべては言い切れないわけです。メッセージが前面に出て来ると押しつけに思うお客さんもいる。なので、ブランドのメッセージはかなり簡単にまとめて、包装紙を開いたら見る人は見るというものにしたらいいんじゃないか、という提案なんです。
そう考えると、もともと包装紙には天地がない。だから縦横上下が一緒になってるとか、折り方によって隙間、空間の取り方にゆとりができる。
日本語と欧文と平等で入っているのも、これまでのコーヒーやチョコレートなどのパッケージとは少し違う印象を受けると思います。いわゆるかっこよさそうなパッケージの欧文ってあるじゃないですか。でも、もうそういう時代じゃないから、パッケージもバイリンガルに日本語と欧文をどちらも入れたわけです
条件がそれしかなかった結果のデザインではあるんだけど、最初から見る人がなんとなく気になるような違和感を出したかったので、うまく収まった形になりました」

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 重く複雑なコンセプトに対してシンプルなグラフィック、シャープなインテリアの中の柔らかな色合いと紙の素材感など、相反する要素を持ち込みつつも全体がまとまる、最初にある要素から思いもよらない異なる要素を持ち込み、異なる要素同士をうまく融けこませる、木住野はこうしたデザイン手法に長けている。

「どんな仕事でもいつもバランスを取りますね。固い時は柔らかく、簡単な時は難しくとか。その合わせ方を意識して、バランスを取って良い緊張感が出るように考えています。
自分のデザインをずっと主張するより、クライアントから出て来る条件や反応など、デザインの束縛を真に受けるほうが面白くなることが多いんですよね。クライアントがダメだと思っているところに対して、そもそもなんでこれがダメなんだっけ?というところから考えて、自分なりの尺度で返していくという感じです」

 周囲環境の中でバランスを見ながらデザインを作っていくのは、6D が得意とする建築の中のサイン計画分野にも通じる事だろう。
 すである状況に対して、その根っこの部分から考え直す。特にサイン計画は可視性や建築の決まりなどかなり束縛が多いため、常套手段に落ち着きがちではある。木住野は、その束縛がなぜあるのかから考え直し、これまでとは少し違う要素でも可能だと発見する。それがうまく結び付いていく。こうした手法は頭の中に多くのストックがあることはもちろん、それを自由に取り出せる柔軟さが必要だ。


(写真 藤本伸吾)
その5に続く) 


by dezagen | 2019-11-18 11:55 | プロダクト・パッケージ